第1章 月夜の悪戯の魔法-シャンクス@海賊
「生まれは?」
「この島よ。」
「家族や友達は?」
「母は知らない。博打狂の父が連れてる女(ひと)たちに育てられて、父は15の時に私の処女を奪ってそのまま死んだ。友達?いたこともあったような、なかったような...」
広いベッドに寝かせた🌸の髪を撫でながら、他愛もない話をする。
「恋人は?」
「一夜限りの恋人なら、15の時から夜の数だけ」
「今、いくつだ?」
「19」
髪を撫でていた手が止まる。
何?と見上げる瞳。
「19、そうか19か」
ふと蘇った姿に、いや、と首を振る。
「あなたは?」
「シャンクスだ」
あなた、はやめろ。と再び髪を撫でる。
「シャンクスは?」
「39」
娘と変わらない歳の🌸がどんな反応をするのが伺ったが、そう、と言っただけだった。
「船での生活は長いの?」
「物心ついたときにゃ、船にいた」
「根っからの流れ者なのね」
うとうとし始めた🌸の背中を優しく叩く。
「シャン、クスの、手は、おおきいの、ね」
「お前のが小さいんだろう」
トン、トン、トンとリズミカルに叩き続けると、パタリの🌸の瞳が閉じた。
少し耳を寄せると、すーすーと穏やかな寝息が確認できた。
首元までしっかりとブランケットを掛けてやり、そうっとベッドから降りた。
空の皿を乗せたトレーを手にすると、ランプの明かりを吹き消して部屋を出る。
音を立てないように扉を閉めると、廊下の先に仲間たちがいて、ぅおうっ!と驚く。
「何だ、立ち聞きか?趣味悪いぞ」
片手に持ったトレーをルゥが掬い上げた。
「お頭、なんたってあんな女を?」
「うん、ちょっと気になってな」
少し部屋を振り返るシャンクス。
「19だとよ」
「...同じ年か」
「それ聞いちまったら、もう、何か、ほっとけなくてな」
あはは、と笑うシャンクスに、聞いたベックマンは腕を組む。
「レッドフォースを見て、『あなたの船長はやり手なのね』だとよ」
入江ではない港に停泊しているため、三本傷のジョリー・ロジャーが描かれた海賊旗も船旗も降ろされている。
「船長だって、言わなかったのか?」
「ああ、後で知ったら驚くかな?」
いたずらに笑うシャンクスに、ヤソップは呆れた溜息をついた。
「朝飯までに目覚めなかったら、このまま出港する」
「っ連れて行くのか?」
驚くルゥに、ああ、と笑った。
