第6章 夏風@仁王雅治
✜
そろそろ来るはず、とコートん外に視線を向ける。
休憩!の声に、思い当たる場所まで行くと、予想通り、自販機を見上げとる🌸がおった。
にやけに近い笑い方をしとるのは、自覚しとる。
気配を消して近づくと、スポーツドリンクのボタンに伸びかけた小さな手ごと、背後から包み込むように抱き締める。
すっぽりと隠れしまいそうな小こい体を抱き寄せ、鼓動をごまかすんごと、少し声を上げる。
驚いた表情の🌸。
毎回ドリンクを買ってこんくていい、と伝えた返事に、再び彼女ん手を使って飲み物を選ぶ。
彼女が選んだレモンティーとスポーツドリンク。
周りん人がおらんのを確認してレモンティーを一口、飲む。
きょとん、と見上げる彼女ん腕を引くと、脈打つ心音が聞こえそうなほどに近づいた唇にそっと重ねる。
目を瞑ることもせず、呆然と立つ🌸の頭に、ほんの少し減ったレモンティーのボトルを置いた。
✜
こくん、と目の前で上下した喉仏。
とん、と頭の上に置かれたレモンティーのボトル。
レモンティーの味がする口を手で覆う。
「『ファーストキスはレモンの味』言うじゃろ?」
レモンティーじゃがな、と目の前で笑った雅治は、ごちそうさん、とスポーツドリンクを片手に、ヒラッと手を振って行ってしまう。
そうじゃ、と立ち止まり、振り返った。
「寄り道、付き合うてくれるか?🌸」
「っうん!」
「来んしゃい」
ほれ、と差し出された手に駆け寄ると、彼の方から手を絡めて繋ぐ。
「もうちょいコートの近くに来ればいいが」
「なんか、あの距離が丁度よくて...」
「あと、いつになったら『まーくん』呼んでくれるんかのぉ」
「え?『まーくん』がいいの?」
猫背気味の彼を見上げる。
「まぁ、くん?」
「なんじゃ?」
「呼んだだけっ」
「🌸」
「なに?」
「...呼んだだけぜよ」
キュ、と一度強く握られた手。
まだ強い日差しの下。
キラキラとした彼の銀髪を揺らす風がほんの少しだけ涼しかった。
end