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思いつき短編たち

第1章 月夜の悪戯の魔法-シャンクス@海賊


あまり立ち寄ることのない港へ連れて行かれると、赤い龍を船首に掲げたキャラック船が腰を据えていた。

「あなたの船長さんは、とてもやり手なのね」
立派な船だわ、とあられもない姿に羽織った黒の羽織の袷をギュッと握る。
「さあ、どうだかなぁ」
こっちだ、と掛けられたタラップを上がる。
甲板と見晴台にいる船員の目を掻い潜って船室に入る。
「奥の右が風呂だ。好きに使え」
船の奥の方の部屋に🌸を入れると、返事を待たずに扉を閉める。

ランプの付いていない部屋に目を凝らす。
壁にはいくつかの海図。
数人が掛けられるテーブルにも海図。
窓近くのベッドのブランケットはくしゃくしゃで、開けっ放しのクローゼットには数枚のシャツとズアーブパンツ。
一つのベッドに、彼がこの船で与えられている役割がそれなりに上位のものだと知る。

好きに使え、という言葉に甘えてシャワーを借りた。
キスマークを付け無かったことは、あの海兵もどきの唯一の評価点かもしれない、とドアを開けると、タオルと新しいシャツが置かれていた。

娼婦とはいえ、裸で待つのは逆に男の脱がせる楽しみを奪ってしまうだろうと白いシャツを拝借する。
微かな月明かりだけが差し込む部屋を眺めていると、入るぞ、と言う声で戻ってきたシャンクスの手にはトレー。
食えるか、とテーブルに置かれたそれには、温かなスープの器と水のグラス。
「今、ランプを付けてやる」
カチャカチャ言うランプの音と、シュッ、とマッチをする音。
仄明るい光の元に目を凝らす。
コト、とテーブルに置かれたランプ。
とても一つの手提げランプでは照らしきれない部屋の広さに驚き、また、向かいに掛けた彼の姿にも驚く。

「あなた、隻腕なの?」
「ん、ああ、気づいてなかったのか?」
右腕の袖を絞ったシャツの着方に瞬く。
「片腕で、その大剣を?」
椅子にかける時にテーブルに掛け立てた大きなサーベル。
ついさっき、それを片手で振るって一つの首を刎ねたと言うのか、と目を見開いた。

「慣れりゃなんてことないさ。ほら、冷めないうちに食え」
うちの料理はうまいぞ、と太陽を思わせる笑顔で言われ、いただきます、とスプーンに手を伸ばした。
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