第6章 夏風@仁王雅治
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どこで待っていようか、としばらくテニス部を眺めたあと、校内の竹林広場にある談話用のカーデンチェアに腰掛け、少し先のテニスコートを見ていた。
片付けが始まった様子に、コートへと向かおうとした。
「🌼」
東門と西門を繋ぐ通路を挟んで向こうのテニスコートにいるはずの仁王くんが、高等部校舎であるはずの4号館の方から来る。
「あれ?
仁王君、いつ、通った?」
テニスコートから4号館に行くには、一度、2号館の端から端まで移動して3号館から外に出るか、自分がいた竹林広場を抜けるしかない。
ずっと見ていたはずなのに後ろから来た仁王くんは、問いには答えずに、なあ、と言う。
「おんし、『立海大付属中の5大ジンクス』ち知っとるか?」
「え?ああ、うん。なんだっけ...
卒業生からネクタイもらうやつと、購買の焼きそばパンと、図書館のお悩み相談。あとは、花壇のお手入れのやつと...校舎裏の告白、だっけ?」
「じゃったかのぉ」
すでに制服に着替え終わっている仁王くんは、さっきまで自分が腰掛けていたガーデンチェアに座って続けた。
「今日なぁ、焼きそばパン、買うたぜよ」
「買えたんだっおめでとう」
競争の激しい焼きそばパンは、朝練終わりに駆けつける運動部では争奪戦になっていて、買えると幸運があると言われている。
「そんで、昼休みに散歩しとったら幸村に捕まってな。
花壇の手入れ、手伝わされた」
「ああ、幸村君がお手入れしてるところ?
いつも綺麗だよね」
今は何の花が咲いてた?と仁王くんを見る。
一瞬合った目が、なんじゃったかな、とそらされる。
「そういやぁ、図書館のやつな。
ものは試しに、やってみたぜよ」
「っ返事あった?」
おん、と頷く仁王くん。
「どんな相談したの?」
「...恋の相談」
「恋、の」
そう、と俯く。
「...仁王君の、恋の相談って?」
「3年ほど、片思いしとってのぉ」
「仁王君が、片思い?
い、意外だなぁ」
想っている人がいたのか、と二人きりの状況に浮かれていた気持ちが沈んだ。
「どんな返事が来たの?」
顔を見れないまま、聞いた。
「素直に伝えてみろ、と」
「そ...か
告白してみたら?」
きっと叶うよ、と笑ったはずなのに、声は震えていた。