第6章 夏風@仁王雅治
(「お疲れ様。よかったらどうぞ」「お疲れ様。よかったらどうぞ」...よしっ)
イメトレばっちり!と気合を相棒に、自販機で買った冷たいスポーツドリンクを手に、向かうは2号館奥のテニスコート。
(いる、かなぁ?)
部員は中学生だけでも50名を超える上に、テニスコートは付属高校生もいるので、見つけられるだろうか、とコートを目を向ける。
(いた、)
コートの脇で、ラケットを腰を回して立っている片思い相手を見つけ、口元が緩む。
2学期が始まったばかりだと言うのに、外にいるというだけで体中から汗が噴き出す気候の中で、運動部はそれでも活動している。
(相変わらず日陰にいる)
何かと陰に入りたがるらしい仁王君は、テニスコートにできた僅かな木陰の下にいた。
(今なら声、掛けられるかな)
ちょっと「お疲れ様」とドリンクを渡すだけ、と汗をかいているペットボトルをブラウスで拭う。
休憩っ!の声に、部員たちが木陰に入り込んだり、コートを抜けて水道へと向かう。
(えっと、)
特徴的な白銀の髪を見失い、キョロキョロする。
(どこか行っちゃったかな...?)
あれぇ?と背後の気配にも気づかず、黄色いウェアの集団を目を凝らす。
「仁王君、」
「呼んだかのぉ?」
耳元に聞こえた声に、うひゃあ!と飛び上がった。
「にっお、君っ!
あ、あの、お疲れ様っ!」
握りしめて汗をかいたボトルを、どうぞ!と差し出す。
「おお、気が利くのぉ」
「暑い中、お疲れ様」
「ありがとな。もらうぜよ」
どうぞっ、と手渡す時に触れた指先。
パキ、とキャップを開けて飲む仁王君の喉元に汗が伝う。
1/3ほどを飲むと、ふう、と腕で汗を拭う姿に見惚れる。
「🌼、何時頃までおるか?」
すでに放課となって一時間は経っている。
「えっと、て、テニス部が終わるまでいようかなぁ、と」
照れて俯くと、そうか、ともう一度飲んだスポーツドリンクのキャップを閉めた。
「ちと、寄り道に付き合いんさい」
そう言うと、飲みかけのボトルを器用に🌸の頭の上に乗せ、日陰におんさいよ、と背中越しに手を振って、コートへと戻っていった。