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思いつき短編たち

第5章 My Princess-忍足侑士@後輩彼女



「待ち伏せもされとらんし、付け回されてもないで」

あ、と彼女らが見上げる階段から、静かに降りてくる侑士。

「困っとる...せやねぇ。
 🌸のことで困らされとるんは、可愛すぎることくらいやろか」

最下段に降りると、🌸を背に隠すように、彼女らに向き合う。

「憶測やの想像やの好き勝手するんは自由やけど、口に出して他人(ひと)傷つけだしたら、それはもう罪になんで」

あの、えっと、と視点が定まらない女生徒たち。

「なにしたいんかわかりとぉもないけど、🌸を傷つけたいんなら、俺に言いや。
 俺に言えへんことなら、本人に言うもんちゃうで」

そうやろ、と鋭く向けられた侑士の目線に口籠る。

「このくらいなら、とでも思うたんか?
 ちぃと考えれば、俺が黙っとるかどうかくらい、わからへんか?」

語尾が強まる侑士。

「俺ん事で🌸になんや言いたいことあるんなら、俺に言うてき。
 いつでも聞いたるから」
「いえ、あの、ごめんなさいっ」

走り去っていく女生徒たちを睨みつけ続ける侑士の袖を🌸が引いた。

「良いのですか?
 侑士さんに、好意を抱いてくださっていたのに」
「あないな気持ち、金払われても欲しゅうないわ」
「大丈夫でしょうか?」

放っときや、と自分越しに向こうを覗き込むようにしている🌸の頭を引き寄せる。

「ああ言うん、いつからや?」
「『ああ言うん』とは?」
「嫌がらせ、されとるんやろ」
「どうでしょうか...」

ふーん?と首を傾げる🌸に、ほんまに、と嘆息する侑士。

「もうちょい、周りに関心持ちや」

鈍ちんすぎるで、と苦笑いの顔を見上げる。

「4回告って気づかへんかった子やから、鈍いんは知っとるけど」
「それは、4回は、本当に私を好きなのか、確認の機会があったということで」
「物は言いようなやぁ」

お陰さんでしっかり自覚したでぇ、と手を引かれて歩き出す。

「🌸、」
「はい、侑士さん」

幼い頃の頃の約束を、今も忠実に守る🌸の髪を、なんもないで、と撫でた。

                end
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