第4章 SAYONARAベイベー-シャンクス@現代パロ
目的地があるのかも知らないツーリングに付き合わされながら、ヘルメットの中で微かに歌う。
「愛してる」って言われる度に
信じてたけど 関係は疑問だらけで
別れたいのに別れられない
通信機能内臓のヘルメット。
さっきのカーブで内輪外輪差を計算していなかったのか、接近距離まで来た大型トラックに、あっぶね、と運転者が零したのがはっきりと聞こえたので通信機能は切っていないようだ。
愛してくれない男から離れられない女心を歌った曲を口遊み続ける。
これでいいの? いい訳ないよ
私はちっとも愛されてないの
今日も言えない だけど言いたい
SAYONARAベイベー すごくツライ
アカペラを続けようとすると、おい、と低い声が耳元のスピーカーから聞こえる。
「当てつけかよ」
「自覚がお有りでしたか」
「...こ、」
「『断れなかった。適当に撒いて帰るつもりだったんだ。
その、一回ヤれば満足するかなって...朝までになるとは俺も思ってなかった。
なんかうまいもん食わしてやるから... ほしいもんとかねぇのか?何でも買ってやる。行きたいところは?食いたいものは?どこまででも行くし何でも奢る』」
淡々とした🌸の長台詞に、国道の待避所にバイクを駐める。
ゆっくりと振り向くと、天気いいねぇ、とシールド越しに空を見上げている🌸。
「なぁ🌸」
「鳥、飛んだ」
しばらく走らないと判断したのか、ヘルメットを取る。
「シャンクスさぁ」
少し乱れた髪を整えて微笑んだ。
綺麗だなぁ、と眺める。
「浮気を許してくれるかで、愛されてるかは計れないよ」
ブツ、とヘルメットの通信機器の接続が切れた音に、自分もヘルメットを脱ぐ。
「気づいてないと思ってたでしょう?」
慣れた動きでバイクから降りると、ん〜、いい風!と背伸びして少し歩く。
潤んだ目で、傷ついたような顔のシャンクス。
「一回さあ、ちゃんと別れよっか」
「っ!」
あ、煙草捨てたやついる、と握りつぶされたシガーボックスを見ている🌸と、バイクに跨ったまま動けないシャンクスの間をサァ、と心地良い風が抜ける。
「い、まさら」
「今まで許されたからなに?」
積み重ねって言葉知ってる?と振り向いて微笑んだ。