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思いつき短編たち

第3章 九十九折-シャンクス@海賊


頭を撫でられる心地よさに、すぅすぅと寝息を立てるシャンクス。

『俺の船に乗ってみるか?』
『うちにも、お前と同じくらいのが二人いる』
『ほれほれほれっ!シャン坊とバギ坊に遅れを取ってるぞ!』
『『女だてらに』など言わせるな。』
『見えなくったって、確かなものはあるだろう』

「ロジャー、船長」
白闇の中に浮かんだ懐かしい姿と声に微笑むと、ギュッ、と逞しい片腕に抱き締められる。


『🌸は俺が守るんだ!』
遊んで〜!と小さかった体で抱きつき、力強く言っていた声。下から聞こえていたはずなのに、ずいぶんと上から聞こえるようになったのはいつからだったろうか。
『髪の色は赤だぞ!瞳はブルー・グレイで...え?覚えてる?じゃあ...あっ身長!身長が伸びたぞ!このくらい!』
引かれた手を乗せられた頭が、背伸びをしても届かないほどに大きくなったのは、その声がよく通るボーイ・ソプラノから張りのあるバリトンに変わっていった頃だったと思う。

きっとシャンクスも、ロジャーのように守ってくれるだろう。
たくさんの冒険をさせてくれるだろう。
けれど船に乗れば、冒険を制御させてしまうだろう。
言葉足らずの気遣い屋な彼の性質を鑑みれば、今の状態の自分が船に乗るのは善策ではない。

「たまにこうして気まぐれに立ち寄って、冒険譚を聞かせて。それだけで、私も冒険できるわ」
少し汗ばんだ前髪を額から払い、そっとキスをする。
「あなたは、海に愛されている」
白闇に閉ざされた瞼に残された最後の記憶。

最も敬愛する人のローグタウンでの最期。
その姿に涙する顔を麦わら帽子で隠そうとした彼。
🌸っ、血が!と泣き腫らして赤い顔を一瞬で青く染めて目を見開く最愛の姿が、この瞳に映った最後の光景だった。

                   end
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