第8章 可愛い後輩
自室で綺麗めな白のワンピースとカーディガンに着替え、ジンの部屋まで走る。
その間に誰にも会いませんように・・・と祈りながら。
私の頭の中はジンでいっぱいで。
早く会いたくて・・・会いたくて・・・
足よりも気持ちが前へ突っ走っていた。
あの角を曲がればジンの部屋に着く・・・
「っ!?きゃっ・・・」
あと少しという所で盛大に躓き、大きなものにボスッとぶつかって。
「いった・・・・・・っ!!」
鼻腔をくすぐる癖のある強い匂い──
私が大好きな匂いだ。
目だけを上に向ければ、私を見下ろすジンと視線が絡み合う。
「あっ・・・ごめん・・・なさい・・・ぶつかっ・・・」
「遅いんだよ、バカ」
ジンの香りと煙草の匂いに包まれて・・・私の居場所に帰ってきたのだと安心する。
数日前まで自分から避けていたのに、たった1日離れていただけで胸が締め付けられるほど苦しくて寂しかった。
彼の側にいないと落ち着かない。
・・・これでは、依存しすぎだと呆れられるだろうか。
「遅くなって・・・すみません・・・。ジン・・・・・・会いたかった・・・」
「・・・・・・バーカ。俺のセリフだ」
「んっ・・・」
ちゅっ・・・とジンの唇が押し付けられる。
誰か来るかもしれないと考える余裕もなく、ただただジンが欲しくて。
離さないで・・・と想いを込めてキスをしながら彼の瞳を見つめると、眉がピクッと上がり眉間に皺が寄った。
「・・・チッ・・・こんな顔見せられねぇ」
こんな顔とは・・・どんな顔だろう。
私だって誰にも見せたくない。
熱が籠った色気のあるジンの顔・・・。
ジンは部屋に入る為に私の腰を抱えてくれて。
早く愛されたいと身体が疼き出す。
扉を開けるジンの顔が近付いてきて、その様子を薄目で見ていた。
「ジンさんいらっしゃったんですね!!きゃあっ!かっこいい!!」
アジト中に響き渡る声に、2人の唇は重なる寸前に止まる。
本当にバカだな・・・・・・私。
ギムレットの存在を完全に忘れていた────