第8章 可愛い後輩
朝早く起床しメイクを済ませた後、1人でジンに会いに行き再びギムレットの部屋に戻ってから撮影現場に向かおう、と計画を立てていた。
「ちょっと着替えてくるね。すぐ戻るから」
「私の服で良ければ着てください!たくさんあるので〜!」
「ありがとう・・・でも、私には若い子の服を着こなすのは難しそうかな・・・。気持ちだけいただくね。部屋で待ってて?」
「ミモザさんも若いじゃないですかー!わかりましたっ!私もご一緒します!!」
・・・・・・・・・待っててと言っているのに。
「ご一緒しなくて大丈夫。今日も忙しいし、ゆっくり休んでて?」
「車の中で休ませてもらいます〜さぁ行きましょっ!」
「・・・・・・」
結局、遠足に行く子どものように浮かれているギムレットも車に乗せてアジトへ向かうことになった。
私がメッセージを送ってからジンからの連絡はないが・・・朝戻るのを待っていてくれているだろうか。
いつものように「遅い」と怒られてもいい。
「ガキ」と子供扱いされてもいい。
許してもらえるまで何度でも謝るから・・・・・・ジンに会いたい。
「昨夜の件、他のスタッフさんが相手に話してくれて・・・私には近付かないように約束してくれたみたいです。本当にありがとうございます・・・」
「そう、よかった・・・安心したよ。家は特定されないように気を付けないとね」
何かをされた訳ではないが、何かがあってからでは遅い。
念の為、部屋と連絡先を替えよう。
他のモデルさんも被害に遭わなければ良いのだが・・・。
「今日、ジンさんいらっしゃるんですか?」
突然、ジンの名前が出てきてピクッと肩が上がった。
ギムレットの期待のこもった表情を見て、紹介してと言われていたのを思い出す。
「・・・どうだろう?聞いてないけど任務・・・かもね?」
「付いて行ってもいいですかっ?」
「着替えてくるだけだから。エメも仕事でしょ?遅刻したら困るし、絶対車で待ってて!ね?」
「えー行きたいで・・・」
「待っててね?」
「・・・はぁーい」
納得していない不貞腐れた顔。
実際本当に会えるかわからないし、会えたとしたら貴重な時間を取られたくない。
ギムレットには申し訳ないが車内で待つよう念を押して、全速力で着替えに向かった。