第8章 可愛い後輩
ジンと対面し、声を高く上げてキャーキャー喜んでいるギムレット。
眉間の皺を深くしたジンに睨みつけられてもお構いなしに騒いでいる。
やはり大人しく待っていられなかったか・・・。
不覚にも彼女のおかげで我に返った。
ジンの部屋に入ったら撮影に間に合わない。
「初めまして、ギムレットと申します!今度ジンさんの任務に是非ご一緒させてくださいっ!」
「・・・・・・必要ない」
「そんなこと言わないでくださいよー!私、何でもします!!」
・・・すごい。
ジンの噂は聞いていないのだろうか。
初対面でここまで積極的にグイグイいけるとは・・・信じられない。
私の時なんて声を掛けられても恐ろしくて振り向くことができなかったのに。
「ギ、ギムレット・・・そろそろ行かないと・・・遅れちゃう」
「え!もっとジンさんとお話したいです!!今日は休みますー!!」
「何を言ってるの・・・あなたの任務でしょ?」
任務とは言えプロ意識を持ってモデルをやっているという印象を受けていたのだが・・・・・・任務よりジン?
ギムレットはジンに近寄りハートを飛ばすような上目遣いで彼を見ていて。
しかし、ジンの視線は私の方にあり腰も抱えられたまま。
苛立っているせいか・・・その手にグッと力が入った。
「目障りだ。消えろ」
「っ・・・!!」
一瞬だけギムレットに視線が流れ、低い声で発せられた言葉に背筋がゾクっと震えた。
凍てついた目付き・・・・・・自分が浴びせられたらトラウマになる自信がある。
ジンに好意を持っているなら彼女も相当なダメージを負っただろう。
「かっこいい〜!!冷たいお顔も素敵ですねっ!!」
「・・・・・・は?」
この子、正気?
ジンに真正面から消えろと言われて平常心を保てるの?
虐げられて悦びを得る性癖・・・?
可愛げに振る舞っているが、目の奥が笑っていない笑顔が気味悪く感じた・・・。