第8章 可愛い後輩
車を飛ばしてギムレットのアパートに戻り、周りを見渡したが誰もいなかった。
街灯がついていたものの深夜で暗いため、隠れている可能性もある。
インターホンを押すと音でバレてしまうのでギムレットにメッセージを送った。
数分待っていると静かに扉が開き、僅かな隙間から顔を出したギムレット。
とりあえず部屋の中に入れてもらい話を聞くことにした──
「ミモザさんー!!今夜一緒にいてください!私、怖すぎて眠れません・・・」
「ん・・・そうだよね・・・」
明らかに下心がありそうだった男性スタッフ。
人気者の"エメ"が狙われるのは珍しいことではないだろう。
「ベルモットに連絡してみるよ」
「さっきしたんですけど、ミモザに付いてもらって・・・と言われて・・・。だめですか・・・?」
「そう・・・。ベルモットに言われたなら・・・一晩、泊まらせてもらうよ」
「嬉しい!ありがとうございますっ!」
目を潤ませて上目遣いで「だめですか・・・?」なんて・・・・・・相手が男だったら一瞬で落ちてしまうだろう。
そういえば、彼女はどんなやり方で情報収集をしているのか聞いていなかった。
好きな人にハニートラップを頼まれたらどうするか・・・と質問されただけで。
天真爛漫なギムレットなら私よりも上手く誘惑して情報を引き出せるはずだから、後々やることになるのではないだろうか。
「ミモザさん、お風呂お先にどうぞ!置いてあるもの自由に使ってください!」
「あ・・・ありがとう。じゃあ入らせてもらうね」
脱衣所の扉を閉じて、ふぅっと小さく溜息を吐く。
組織に潜入してから1人で行動するのは初めてで、いつも以上に疲れた。
これからジンと離れて行動することが増えるのだろうか。
ジンが側にいろと言ったのだから・・・・・・離れないでほしい。
今夜は戻れないと連絡しなければ怒られる・・・。
スマホを開くと案の定、ジンからの着信とメッセージで埋まっていて。
心配してずっと待っていてくれてるんだろうな。
煙草は何本吸ったんだろう。
せめて声を聞きたかったけど・・・・・・。
謝罪の言葉と朝一で戻ります、というメッセージを送り・・・。
会いたくなってしまうため朝までスマホを開かなかった。