第8章 可愛い後輩
渋滞に巻き込まれアジトに着く頃には夜が更けていた。
久々の運転、更にはどこかで見られているかもしれないという緊張感で身体が強張っていて。
慌てて返事もせず戻ってきてしまったが・・・ジンは部屋にいるだろうか。
ジンの元へ行く前に公安用のスマホの電源を切ろうと鞄から取り出す。
"ジンとはどうなった"
と、降谷さんからのメッセージ。
「了解」と送られてくるのが殆どなのに・・・何故今日に限って・・・。
そこまで私に言わせたいの?
ベルモットにでも聞けばわかることを・・・わざわざ私の口から言わせようとしている所に降谷さんの腹黒さを感じる。
こちらも意地になり、無視をしようと電源を切った・・・──その時、組織用のスマホが鳴った。
「・・・もしもし・・・ギムレット?」
『ミモザさんごめんなさい!もう帰っちゃいましたよね・・・?』
「うん、今着いた所だけど・・・どうしたの?」
電話の向こうからは焦ったようなギムレットの声。
何か問題が起きたのだろうか。
『食事に誘ってきたスタッフさんから突然連絡が来て・・・。家の近くにいるから会いたいって言うんです。私・・・怖くて・・・』
「え・・・家の場所知ってるの?もしかして今までも同じことあった・・・?」
『いえ、初めてです。場所も教えたことないですし・・・。ミモザさん・・・・・・申し訳ないんですけど、また来ていただくことできますか?』
「私よりも男手があった方が良いんじゃない?」
『不安で心細くて・・・できたらミモザさんに来てほしいです・・・』
今から・・・・・・。
組織の人間なら1人でも解決できそうな気はするが、情報収集しかやったことがないと言っていた。
私にできることなら助けてあげたい、けど・・・。
正直、ジンに会いたい気持ちの方が強い。
大きな身体で抱きしめて、熱い唇でたくさん触れて、私の不安を取り除いてほしい・・・。
でも・・・ベルモットに任された、これから共に歩む相棒であり可愛い後輩だ。
私を必要としてくれるのならば・・・・・・。