第8章 可愛い後輩
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「新入りって誰だよ?まさか男じゃねぇだろうな?」
「さあ・・・それについては何も聞いてませんぜ」
「私も・・・あれから何も・・・」
サイドミラーからミモザの様子を伺い、先程までの出来事を思い浮かべる────
「女々しいから忘れろ」と言っているのに、目にいっぱいの涙を溜めて溢れないよう上を向いて。
ウォッカが迎えに来るんじゃなかったのか?
泣くのを堪えるために固く閉じられている唇にそっと口付け、真っ赤な顔を自身の胸に押し付けるように抱きしめる。
頭を優しく撫でてやれば腕の中でグスッと鼻を啜る音が聞こえた。
「・・・鼻水付けるなよ」
「・・・・・・・・・」
バスローブだから構わねぇが。
こんなに泣くような女だったか?
やはりガキだな・・・と思いながらも、俺の腰に手を回してギュッと掴み、甘えるように顔を埋めているミモザが可愛くて堪らない。
女の涙ほど面倒なものはない・・・・・・そう思っていた。
誰だよ、そんなことを言った奴は。
この世で1番・・・綺麗な涙を流す女がここにいるぞ。
昨夜の情事とシャワーで巻き髪と化粧は取れてしまったが、最初から着飾る必要などない。
素の状態で充分に整っている。
綺麗な髪から香るシャンプーの匂いを嗅いでいるとミモザがもぞもぞと動き出した。
「・・・何だよ?」
「いえ・・・すみませんでした・・・。ウォッカが来るので仕度を・・・」
そういうことは忘れないのか。
俺から離れようとするミモザの身体をぎゅうっとキツく閉じ込めて。
「いっ・・・痛いです・・・」
「・・・・・・ギリギリまでこうさせろ」
「ジン・・・・・・んっ・・・」
コイツの唇はクセになる。
一度味を知ってしまうと離れるのが困難で。
抱きしめるだけでは足らず、こうなってしまうのはわかりきっていること。
甘い雰囲気を出しているのは本当に俺なのか・・・自分で自分を疑うが、コイツ限定だ。
俺がミモザに癒されているように俺もコイツを甘やかして癒したい・・・。
この想いはどのくらい伝わっているのだろうか・・・
頭の片隅で考えながら、ウォッカから到着のメッセージが来てから30分後にホテルを出た────