第8章 可愛い後輩
「・・・ジンは・・・言わないって信じてるよ」
「わぁ!愛されている自信があるんですね!!素敵ですっ」
自信なんて・・・触れたらすぐ壊れてしまうほど脆いものだが・・・・・・信じたい。彼がくれた愛を・・・。
離さないと言ってくれた言葉を。
「実は私!ジンさんにお会いしたことはないんですけど・・・指示を受けたり遠くからお見かけしたりしたことはあるんです!」
「そうなんだ・・・ジンが・・・指示を・・・」
「長身でスラッとしていてモデルみたいですよね!近くで見たらもっとかっこいいんだろうな〜」
知らなかった。ジンと関わりがあったんだ。
瞳を輝かせ、花が舞っているような雰囲気で楽しそうに話すギムレット。
恋をしている乙女のように健気で可愛くて。
私の中の黒い感情が出そうになり、必死に奥の方へ押し込めた。
♦︎♥︎♦︎
ギムレットの自宅に到着し、車内から見送る。
「ありがとうございました!ミモザさん、これからよろしくお願いします!」
「こちらこそ。よろしくね」
素直で可愛い子。
本当に組織にいるのがもったいない。
ふと窓から空を見上げると、5キロ先のビルの屋上に降谷さんの姿が見え鼓動が飛び跳ねた。
あれは降谷さん・・・ではなくバーボンだ。
隣にはベルモットの姿もあり、任務中だとわかる。
「びっくりした・・・・・・」
監視されているのかと焦ってしまった。
さすがにないだろうと思いつつ、所持品や車内を探したが発信機や盗聴器は見つからない。
よかった。考えすぎだ・・・落ち着こう・・・。
震える手を抑えながら降谷さんへのメッセージを打つ。
多分、ベルモットから聞いているのだろうけど。
「ジンと恋人になった方が良い」と言われていたから、恋人になったことだけでも伝えなければならない。
伝えなければ・・・ならない・・・──
でも私は・・・命令ではなく、自らジンが欲しいと願ったの。
彼が欲しくて・・・彼のものになりたくて手を伸ばした。
この大切な気持ちは、NOCとして上司に報告することはできない。
簡潔にギムレットと行動を共にする旨を送り、急いでその場を去った。