第8章 可愛い後輩
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「可愛いー!」と黄色い声が飛び交うスタジオ。
ギムレット・・・、"エメ"がポーズをとる度に周りのスタッフが褒めて盛り上げる。
モデルは華やかで楽しそうなイメージがあったが・・・シーンに合わせて着替えやヘアメイクをして、1つ1つパターンの違うポーズで撮影をする。
これを朝早くから1日中やっているのだから・・・可愛いを作るのは体力勝負だ。
見ているだけで大変そうなのに、弾けた笑顔でそんなことを全く感じさせないエメは、もはやプロだと思う。
何故、組織に入ってしまったのか。
純粋にモデルとしてやっていけないのか。
「新しいマネージャーさんですか?」
「あ、はい!エメがいつもお世話になっております。丸音と申します」
私はというと・・・・・・
ギムレットを支える役目をしつつ共に行動する相棒・・・のようなものに任命された。
今日はジンに付けられたキスマークをコンシーラーとファンデーションで隠し、動きやすいパンツスタイルで。
今まで支えられる側に身を置いていたため、自分が誰かを支えるというのは新鮮だ。
「エメちゃんすごいですね!デビューしてすぐにソロ表紙に抜擢されていましたし。マネージャーさんも美しい方で・・・素晴らしいです」
「いえ・・・恐縮です。ありがとうございます」
鼻の下を伸ばし、わかりやすくデレデレと話しかけてくる男性スタッフ。
マネージャーの私まで褒める必要はないだろう。
それよりも・・・先程から鞄の中で鳴っているスマホを早く確認したくて落ち着かない。
「瑠愛さん終わりました〜!帰りましょ!」
「エメちゃん、お疲れさま!」
「エメちゃん!今日も可愛かったよー!この後どう?3人で食事でも行かない?」
「すみません、明日も早いので・・・失礼します。お疲れさまです」
どこにでもこういう男はいるものなのだと、心底呆れる。
断ってもしつこく声を掛けてくるスタッフから逃げるように現場を後にした。