第7章 ライムを添えて ※
「3秒以内にその汚ぇ手をどかせ。永遠に眠りたくなければな」
振り向かなくてもわかる。
凄みがある低い声と嗅ぎ慣れた煙草の匂い。
横目で見ると男の背中には銃口が突き付けられていて、下手に動けば本気で撃たれる。
「なッ・・・・・・うァ・・・・・・」
男は何が起こっているのか把握できず・・・・・・
後ろの圧に危険を感じて声が出ないようだ。
「兄貴、コイツらどうしやす?」
「二度と俺たちの目の前に現れないよう始末しろ」
「ちょっ・・・ジン、これしまってください!始末って・・・私何もされてませんよ!」
「・・・殺しはしない。考えが甘いんだよ、お前は」
あっという間に、ウォッカが男たちを連れて店を出て行ってしまって。
ベタベタ触れられて不快だったから助かったけど・・・・・・気の毒に。
ジンは先程まで男が座っていた場所にドカッと腰掛けると、私が飲んでいるジンライムに目を向けた。
「・・・・・・これ、お前が呑んでるのか?」
「はい・・・そうですけど・・・。ジンもウォッカと来てたんですね」
「・・・ミモザを借りるって、最初からココに来るつもりだったのかよ?ベルモット」
「そうよ?あなたたちも来てたなんて・・・偶然ね?せっかくミモザとデート中だったのに・・・」
これはデートだったんだ・・・と、ぼんやり思いつつ、気になったのはベルモットのニヤリと緩む口元。
彼女の企みは、まだ終わっていないのだろうか。
「まぁいいわ。ねぇ、それより・・・ジン。どう?今夜。久しぶりにマティーニでも作らない?」
「あ?」
「マティーニ・・・ですか?」
私を挟んで、ベルモットがジンを誘っている。
マティーニを作る?どういうことだろう・・・。
「ミモザ知らないの?ジンとベルモットが交われば・・・」
「フン・・・黒と黒が混ざっても・・・黒にしかならねぇよ・・・」
ジンとベルモットが交わる・・・・・・
"混ぜる"ではなく・・・"交わる"・・・・・・
・・・セックスをするってこと?
久しぶりにって・・・ジンとベルモットは以前、セックスをする関係だったということ?
もしかして・・・・・・今も?
心臓が破裂しそうなほどバクバク鳴り始めた。