第7章 ライムを添えて ※
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「さっぱりしたものをお願いします」
「かしこまりました」
カウンターの奥の席に座り、バーテンダーに注文をする。
久々のバーで緊張していたが、落ち着いた雰囲気で居心地の良いお店だった。
ベルモットが用意してくれた黄色のドレス・・・。
身に付けてみると気持ちがパァッと晴れて・・・ヘアスタイルやネイル、全てが完成する頃には心のモヤモヤが吹き飛んでいた。
滅多に付けない揺れるピアスもキラキラ光っていて、いくらか女度が上がった気分になる。
格好を変えただけで単純な女だな、と思うが・・・・・・オシャレで自分に自信がつくのは事実だと実感した。
「ミモザ、甘い物が好きだと言ってなかったかしら?」
「はい。いつもならそうなんですけど・・・、今はさっぱりしたものが飲みたくて!」
「お待たせ致しました。ジンライムでございます」
「ジン・・・ライム・・・・・・」
少しだけ頭から抜けていた、"ジン"という言葉にドキッと反応してしまった。
綺麗な透明のカクテルに、グラスの縁にはクシ形にカットされたライムが飾ってある。
ジンのお酒を飲むのは初めてだ。
「いただきます・・・・・・ん!美味しい・・・!」
ライムを絞り一口飲んでみると、スッキリ爽やかで酸味がサッパリと効いた味わい。
これは夏に飲むとさらに美味しいのだろう。
満足しているが、言ってしまえば今の時期には不釣り合いかもしれない。
「こちらのカクテル言葉は、"色あせぬ恋"・・・というんですよ」
「色あせぬ恋・・・・・・」
バーテンダーは人の心を読めるのだろうかと驚いてしまうほど・・・
まさに今、私が求めているものだ。
お互いの気持ちがいつまでも色あせず、変わらぬ恋。
お互いがお互いを想い合う・・・────
ジンライムは味も言葉も今の私にピッタリだった。
何だか無性に・・・ジンに会いたくなった。