第7章 ライムを添えて ※
「兄貴!穴場のバーを見つけたんですが、今夜行きやせんか?」
顔を合わせ一言目から食い気味に話すウォッカ。
こんな時に・・・・・・呑気な奴だ。
「・・・なぜ男2人で行く必要がある」
「はい?以前から2人でしたぜ」
・・・言われてみればそうか。
ミモザが組織に入ってからというものウォッカとバーに行くことが減り、部屋で呑むようになった。
アイツもハニートラップをやっていたから多少はイケるのだろうが、俺の前では呑んだことがない。
穴場か・・・・・・連れて行きてぇな。
俺の頭の中には常にアイツがいて、何をしていても考えてしまうし何に関してもアイツを結びつけてしまう。
側にいない時間が長すぎて、おかしくなってしまいそうだ。
♦︎♥︎♦︎
ウォッカと2人で訪れたバーは行きつけより広めで酒も美味く、落ち着いて過ごせそうな場所だった。
1人客もいるが心なしかカップルが目立つ。
どいつもこいつも、周りをはばからずイチャつきやがって・・・胸糞悪ぃ・・・。
行き場のない感情は酒で流すしかなかった。
まあ、当然か。何故なら今日は・・・
「お2人ともお美しいですね。よろしければ、僕たちもご一緒させていただいても?」
奥の方のカウンターに座っている女2人組が、同じく2人組の男に声を掛けられている。
チッ・・・ナンパかよ。でかい声でみっともねぇな。酒が不味くなるだろ。
気分を害されながらも女の方に視線を向けると、華美な黄色のドレスに目を惹かれた。
くすんだブラウンの髪は全体的にクルクルと巻かれ、フワリと柔らかそうな印象。
黄色・・・・・・たしか、ミモザの花の色はこのような色だったか。
普段身に付けているのを見たことがないが、アイツにも似合いそうだ。
グラスを傾けながら、そのドレスの女を眺めていると男の手が腰に回り、距離を詰めている所が見えた。
女は顔を引き攣らせて引いている様子で、連れの女に助けを求めている。
「いや〜本当にお綺麗ですね!お名前お伺いしてもよろしいですか?」
「・・・えーっと・・・・・・丸音瑠愛、です」
・・・・・・は?