第7章 ライムを添えて ※
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────明日は必ず俺の元へ来い
「・・・・・・」
煙草をふかしながら月を見上げる。
明日は今年最後の満月、"コールドムーン"とやらが見られるらしい。
・・・だからと言って何があるわけでもないのだが。
───どんなときでも呼び出せば、生意気なことを言いながらも駆けつけて来るミモザが俺の元へ来なくなったのは、およそ1ヶ月前。
オレがミモザへの想いを伝えた日からだ。
アイツからの返事はなかった上、自分のことを「嫌いな男」と卑下してしまったが・・・本気で嫌われているとは思っていない。
あの声や表情、感じている声はどう見ても俺と同じ気持ちなはずだ。
仕方なく俺を拒否したことを許してやろうと、次の日に呼び出したら「体調不良」・・・だと。
よくよく考えてみれば、任務終わりにまだ気分が優れないと言っていた気がする。
あれはあの場を切り抜ける為の嘘だと読んでいたが、事実だったようだ。
様子が気になり居ても立っても居られず・・・
欲しい物を差し入れてやる気でいたら、アイツは「いらない」の一点張り。
俺のことが必要ないと言われているようで腹が立つ。
しかし相手は病人だ・・・とグッと堪えベルモットに事情を説明し、託した。
それからも・・・疲れてるだの、射撃の訓練だの、誰かに呼ばれているだの・・・。
挙げ句の果てにはスマホの電源を切るなど、ことごとく俺を避け続けた。
同じ任務の日は少々浮ついている俺に対し、表情を崩さず、視線も合わさず、会話も最低限。
移動はベルモットのバイクかキャンティの車で。
触れるのは控えるつもりでいたが、あまりの避け具合に路地裏に連れ込んで犯してやろうと思ったほどだ。
俺がこんなにも年下の女に苦戦しているというのに、今日はスコッチと親しそうな雰囲気で。
あの2人、最近関わりなかったよな?
バーボンが姿を見せなくなったと思ったら次はコイツか?
はらわたが煮え繰り返る思いで・・・・・・ベルモットとキールが来なかったらどうなっていたことか。
結局、今日も明日もミモザは俺の元へ来ない。
本気で欲しいものは手に入らないっつーのは・・・間違いではないのかもしれないな。