第6章 揺れ動く心 ※
「よし、終了だ。もう風呂に入って寝よう。沸かしてくるよ」
再び、パッと"降谷さん"から"零"に切り替わる。
多重人格なのでは?と思うほど、簡単に別の人間になってしまう。
普段から3つの顔を自在に操っているが・・・・・・私は彼のように切り替えるのは無理だ。
ジンと恋人になり、セックスの報告もしろ・・・?
平気な顔をして・・・自分の彼女に淡々と言うセリフだろうか。
組織に潜入させ、慣れてきたらあとは放置。
公安にいる時よりも餌をくれなくなった。
2人きりの時は甘えたかったが、我儘を言える雰囲気もなくて。
降谷さんの為・・・と思い我慢して、我慢して・・・・・・
寂しさで壊れそうな私を救ってくれたのが・・・ジンだったんだ。
「降谷さん・・・・・・私たち・・・お別れしましょう」
風呂を沸かそうと歩き出していた彼の足が止まる。
こちらを振り返ることもなく、理由を聞かれるわけでもなく・・・冷たい沈黙が2人の間を流れた。
「・・・・・・悪いと思ってる。この件はなるべく早く片付けるよう努力するから・・・」
「違うんです・・・申し訳ありません。私の我儘です。NOCはこのまま・・・私ができる範囲で継続させていただきますが、降谷さんとは上司と部下の関係に戻・・・・・・ッ!!きゃあっ!!」
「上司と部下に戻りたい」と言い終わる前にカーペットの上に倒され、両手首を顔の横に押し付けられた。
冷ややかな目で私を睨んでいて、手首を押さえる力が強くギリギリと痛む。
「・・・ジンに丸め込まれたか・・・」
「なっ・・・そんな、言い方・・・・・・」
「ジンの部屋で・・・───
がアイツの・・・取り込み中の相手だろ?」
「っ!!」
バーボンはすぐに去った、とジンは言っていたが近くで聞かれていたのか・・・。
「部屋の前を通りかかったら女の声が聞こえて・・・一瞬でわかったよ。僕が喘がせていた声だったから・・・」
私の声だと気が付いて・・・扉をノックしたということ?
ジンと私の行為をやめさせる為に・・・?