第6章 揺れ動く心 ※
「相当気に入られてるんだろ?キャンティが騒いでいた。人の車には絶対に乗せない、片時も離れない、狙撃はさせない、危険な目に遭うと・・・」
「たっ・・・頼りないと思われてるんです!足手纏いになるからそういう扱いなんだと思います!!」
無表情で・・・抑揚のない声でキャンティから聞いた言葉を並べられる。
「ジンの懐に入って惚れさせろ」と命令したのは他の誰でもない、紛れもなく降谷さんなのに。
なぜ私が責められなければならないのか。
「もう・・・ジンに抱かれたのか?」
「・・・・・・いえ。でも・・・・・・今日、告白のようなものをされました。私のことが、好き・・・だと・・・」
降谷さんの眉がピクッと上がる。
「・・・ジンが本気で恋をするとは思えないので、信じてませんけどね!」
「・・・本気だろうな。間違いなく奴はに惚れてる」
それは・・・・・・本人に直接言われた私が1番よく理解していること。
信じていないなんて嘘。
ジンからの想いは、ひしひしと痛いほど伝わっていて。
私の胸の奥を熱くさせる。
「・・・・・・私、お役に立ててますか?」
「あぁ、期待以上だ。これは君にしかできない、が・・・・・・はジンに惚れるなど・・・あり得ないよな?」
こんな時にだけ目を合わせるなんて・・・ずるい男だ。
私の心の揺らぎを確認しつつ、自分の元に繋ぎ止めようとしている。
「・・・・・・ジンの機嫌を損ねないように、やんわり断りますね。今まで通りに過ごしても情報は得られますし・・・」
「断らなくていい。恋人になった方が動きやすくなる」
「え・・・・・・でも恋人になったら・・・その・・・」
「あぁ・・・抱かれた時も逐一報告してくれ。絶対に怠るなよ。ピルはハニートラップの時から服用し続けているな?」
頭を殴られたようなショックが全身を貫く。
なんだ・・・・・・嫉妬してくれるのかと思っていたけど、私のことはもう・・・黒の組織を潰す為の道具としか見ていないんだ。
ジンの恋人になるのなら、降谷さんとの恋人関係は解消した方が都合が良いのではないだろうか。
自分でも驚くほどに彼への恋心が、サー・・・っと冷めていくのを感じた。