第6章 揺れ動く心 ※
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ジンのコートを構成員にお願いし、そこから自宅までひたすら走った。
よそ見をせず、進行方向だけを見て。
髪や服、身体にジンの香りと温もりが残ってる。
それを全てなかったことにする為に隅々まで何度も洗い、熱い湯に浸かった。
買い物することも夕飯を作ることも忘れ、思い出したのは降谷さんが来る数分前だった。
「美味しい!また腕上げたね!」
「、ナポリタン好きだもんな。久々に食べてもらえてよかったよ」
夕飯のことを忘れていたと謝ると特に気にするそぶりもなく、冷蔵庫にあるものでナポリタンやサラダ、スープまで作ってくれた零。
彼の手料理を食べるなんて、NOCとして組織に潜入してから初めてだ。
今日の零は機嫌が良いのか後片付けも引き受けてくれて。
私の家なのに至れり尽くせり・・・甘やかしてくれる。
2人の間に流れる空気も心地良く、仲が良かった頃に戻ったようで嬉しかった。
「零、何から何までありがとう!」
「どうしたしまして。・・・じゃ、早速だが報告を聞こうか」
大好きだった笑顔を向けてくれて喜んだのも束の間・・・楽しい雰囲気がガラッとひっくり返り、"零"から"降谷さん"に切り替わる。
余韻に浸る暇もなく、幸せな時間はあっという間に消え去った。
「キャメル捜査官の生死は確認できませんでした・・・」
「そうか・・・大変だったな、お疲れ」
睡魔の限界で報告できなかった為、海猿島までFBIを追った話をする。
組織の話をする時の降谷さんは、私の方をあまり見てくれない。
さっきはたくさん視線を合わせながら会話をしていたのに・・・と気持ちが沈んだ。
「ジンの件は順調のようだな。ミモザというコードネームも提案したと聞いた」
「あ・・・はい・・・・・・そのようです・・・」
ベルモットかキャンティあたりに聞いたのだろうか。
コードネームを貰ったと連絡はしたが、ジンが提案したことは伏せていたから・・・。