第6章 揺れ動く心 ※
そっと扉を開け、廊下に誰もいないことを確認するとパタパタと小走りで去っていったミモザ。
この部屋に来た時と同じように俺のコートを握りしめ・・・「お預かりします」と律儀に持ち帰った。
俺に好き勝手に身体を弄られても、怒ることも泣くこともせず。
本音は聞けなかったが、頬を染めて切なそうにしているアイツに期待してしまいそうになる。
あの白くて綺麗な背中にキスマークの1つでも付けときゃよかったか・・・。
任務後シャワーを浴びたのか、ほのかに漂うシャンプーとボディソープの香り。
その中にアイツの甘い香りも混ざっていて。
ベッドに押し倒したい衝動を抑え、立ったまま柔らかい肌を堪能した。
まさかあれほど濡らしているとは思わなかったが。
俺に触れられて感じているミモザが・・・・・・
死ぬほど可愛かった。
もっと口付けたかった。
舐めたかった。
挿れたかった・・・・・・。
何より、あの腰にクる艶めいた声を聞き続けていたかった・・・が。
煙草を咥えながらソファの脇にある窓を開ける。
外にいたのは、俺とミモザの貴重な時間の邪魔をした張本人。
「盗み聞きとは悪趣味だな・・・バーボン」
「人聞きが悪いですね。ジンにそっくりそのままお返ししますよ」
取って付けたような笑みに虫唾が走る。
「取り込み中のお相手は・・・ミモザ、ですか?」
「フン・・・お前に関係ないだろ」
「やはり・・・あのような女が好みなんですね。あなたも大概、普通の男だということだ」
窓の外で気配を感じ、即座にミモザから離れたためコイツに声は聞こえていないはずだ。
しかし、腹の立つ挑発には乗らなかった。
ミモザへの想いに関しては、嘘を付かず正直でありたかった。
「お前、俺に用があるんじゃねぇのか?」
「そうですね・・・・・・すみません、内容を忘れてしまいました。出直します」
そう言い残し、最後まで笑顔を崩さず去っていった。
どこまでも、いけすかない野郎だ。
「ハッ・・・・・・」
1人になり、静まった部屋に乾いた笑いが響く。
吸い殻を灰皿に押し付け、先程出たばかりの浴室へ再び舞い戻った────