第5章 恋の蕾
♦︎♥︎♦︎
「それにしても・・・乾燥している時期とは言え、よく燃えるわね」
「でも早くしないと消防局の消防艇が・・・」
「そうね・・・」
ラムの指示により、海猿島全体に火をつけることになった。
ゴオォッ・・・と、黒い煙を上げて高く燃え盛っている。
もし本当にキャメル捜査官が土に潜っているとしたら、炎に気付かず逃げ遅れ、最悪の場合・・・・・・。
どうか間に合ってほしい・・・と祈りながら、燃えていく空を見上げる。
「ミモザ、できるだけ火から離れてろ。煙も吸うな。FBIが出てきたら大声で叫べ」
「はい・・・出てきますよね・・・」
「おそらくな・・・」
「いたッ!!桟橋に逃げるよ!!」
ガサガサッと音のする方を見ると茂みからハンチング帽を被った男が姿を現した。
この人がキャメル捜査官・・・
顔も服も泥だらけだ。
キャンティが彼に向かい、ライフルで何度も狙撃をする。
「本当に出てきた」
「ラムの言った通りですぜ」
「フン・・・いちいち褒めるな」
逃げるキャメル捜査官を、組織全員で走って追いかける。
呑気に話しながら走る男性陣は余裕そうな表情だ。
海の方へ追い込まれた彼は柵の中に入るが、姿は丸見えで全く隠せていない。
FBIのこれからの作戦はどうなっているのだろうか。
あとは海に飛び込むしか助かる方法はないと思うが、その間に組織に撃たれてしまう。
「フッ、それでバリケードを張ったつもりか・・・。大人しく出てきたら苦しまずに死なせてやる」
再び桟橋を全力で走り出すキャメル捜査官。
「逃げやがった!」
「撃つよ!」
「いつも通り頭を・・・」
「いや、背中だ・・・心臓を狙え!」
・・・え?
思わず、銃を構えながら頭を撃つつもりだったキールと視線を合わせる。
「あいよ!」
隣で舌舐めずりをしたキャンティがライフルを発砲した。
「ぐはッ・・・」
彼の背中に命中し、胸と背中から大量の血が飛び出る。
そして、吐血したキャメル捜査官は冷たい海に落ちていった・・・。