第5章 恋の蕾
・・・・・・はい?
何ですか今の。
子ども扱いしたりバカにしたり・・・。
今日は首元が詰まった服を着ているのに、今度は脚ですか。
自分が肌を見せない服装だからなのか?
人の着ている物にいちいち文句を言ってくる。
ベルモットなんていつも胸元が開いているけど?
注意しているのだろうか・・・。
ジンとウォッカが私を置いて先に行ってしまい、思いがけず1人で行動することになった。
FBIを探し出して逃すチャンスだ。
「海ボタルのトンネルの出口で彼を撃ったのは私・・・」
茂みの中で誰かと話をしているキールを見つけた。
よく見るとスマホを耳に当てて電話をしているようだ。
「次に撃てと言われたら・・・悪いけど顔を狙わせてもらうわよ。組織の中にキャメル捜査官の顔を覚えているメンバーがいるようだから」
キャメル捜査官というのは逃げているFBIの男ね。
ということは、電話の相手もFBI・・・。
「キール、ちょっといいですか?」
「ミモザ!だめよ、ここにいたら・・・ジンは・・・」
「コードネーム、ミモザです。
あなたは・・・FBIを・・・キャメル捜査官を助け出す術があるんですか?」
『・・・・・・』
半ば強引にスマホを借りて、電話相手に話し掛ける。
電話の向こうからはゴクッと息を飲む音・・・
気配からして相手は1人ではなさそうだ。
返事がないのでキールにアイコンタクトを取ると、はぁっと呆れたように溜め息を吐かれた。
「もしもし。大丈夫よ、この子も諜報員だから・・・。キャメル捜査官が捕まったら私も危険だと心配してくれてるのよ、ね?」
「はい・・・。私にできることはありますか」
『・・・問題はない。キャメルに指示を出している。組織が今すぐに撤退してくれると助かるが・・・』
できることならそうしたいがこれはラムからの指示だ。
たとえ、ジンに甘えて頼んだとしても許されないだろうし、自分が疑われるだけ・・・。
結局、何もできない悔しさに唇を噛んだ。