第5章 恋の蕾
『えっへっへっへ!FBIの奴ら、ビビりまくってる!』
『ラムの言った通り』
『アタイらをハメようなんざ10万年、早ぇーーんだよ!』
銃声の音とキャンティ、コルンの声。
駐車場の外部から組織を狙おうとしていたFBIたちを次々と狙撃している。
「来るぞ。一瞬だからな」
と言った瞬間、ジンは地下から出てきた青い車を助手席側から撃ち貫通させた。
彼らの車はヨロけて煙をあげながらも逃走。
助手席に乗っていたFBIの左脚に弾が当たり、血が飛び散っている所が目に入った。
「標的が南東に逃走。逃すなよ・・・キャンティ!」
『あいよ!』
ジンはこうやって今までも数え切れない人を撃ち、殺してきたんだ。
私が何も知らず平和に暮らしている時から。
あってはならないことをしているのに・・・
何故こんなに格好良く見えてしまうのだろう。
こちらを振り返る彼の姿に心臓が高鳴った。
これ以上一緒にいたら、自分の中の蕾が咲いてしまいそうで・・・。
「ミモザ、俺たちも追うぞ」
「・・・行かないと、だめですか?私がいなくても・・・」
「ハッ、怖気付いてんのか?あー違うな・・・ガキは寝る時間か」
突然の子ども扱いにムッとしたが、この際何でもいい。
自分のやるべきことを考え直したい。
なんて考えていると目の前が暗くなり・・・
視界を手で遮られると同時に、ちゅ・・・っと唇に暖かい感触がした。
「・・・ハエ共を始末したら寝かし付けてやる。それまで俺の側で目を閉じていろ」
「っ・・・・・・」
それはつまり・・・誘われているのか・・・。
昨日のことを思い出し、見なくてもわかるほど顔が赤く熱くなった。
たった一度のキスで身体がジンを求めている。
もっと・・・もっと触れてほしい。
FBIを狙撃し、キャンティたちの後を追わねばならない状況で・・・私は何を考えてるの。
ジンはどういうつもりなのだろう。
本当に寝かし付けてくれるつもりなのか・・・
1人で寝られるから必要ないけれど・・・。
どちらにせよ、これらが片付かないと帰れないということだ。