第5章 恋の蕾
それぞれ分かれて車に乗り込み、街中を走る。
赤に染まっていく空を見上げながら小さな探偵さんを思い浮かべた。
意味不明なあの暗号・・・
きっとあの子なら、もう解読できているのだろう。
だとしたら・・・この任務はまだ終わらない・・・。
『何!?またFBIの暗号メールを傍受した!?』
「!!」
無線をしている右耳からキャンティの驚く声がして、我に返る。
『FBI、さっき殺した』
『ガセじゃないだろうね、ベルモット!』
コルンとキャンティの声で、アジトにいるベルモットから連絡が来たのだとわかった。
『ええ・・・どうやら彼ら、まだお仲間が殺されたことに気付いてないみたい』
「え・・・?」
そんなはずはない。
あの現場にコナンくんがいたんだ。
あの子なら他のFBIにも伝えると思うのだが・・・。
「どうした、ミモザ」
「いえ、少し驚いて・・・」
「フッ・・・何に驚いてんだよ」
ジンは私の些細な変化にも気が付きそうだ。
現に小さく呟いた私の声に反応し、前を向いたまま問いかけていて。
ずっと疑われているような居心地の悪さを感じる。
『場所は果出風町1の4の駐車場で1時間後・・・
あなたのバイパーなら30分もかからないでしょ?
キャンティ』
『10分でお釣りが来るっつーの!』
『私はキールと向かうから、ジンとウォッカ、ミモザはいつものように・・・』
「「了解!」」
もしかしたら・・・そのメールに書かれている暗号はFBIからの罠かもしれない。
あの子は来ないと思うけど、念のため顔を隠した方が良さそうだ。
助手席に視線を向けると、長い前髪で目は隠れているがジンの口元が弧を描いている。
「大事の前だ・・・邪魔なハエ共は一匹でも多く・・・」
『待て・・・私の話を聞きなさい・・・』
突然、聞いたことのない声が我々を止めた。