第5章 恋の蕾
「俺・・・撃てる・・・」
「殺るかい?ジン」
コルンとキャンティがスナイパーを構えている姿が見えた。
コナンくんを狙っている。
「ああ、一撃で仕留めろよ」
「ま、待って・・・!!」
咄嗟に大声で動きを止めた。
他人の死に何も思わなくなったとは言え、子どもを・・・しかも安室さんと共通の知り合いをなくしたくなかった。
「・・・何だよ」
「え・・・っと・・・、子どもが死ぬのは・・・
見たくない・・・です」
「・・・それだけか?
他に理由があるんじゃねぇのか?」
幸い、あの子どもがコナンくんだと気付いているのは私だけなはず。
なるべくバレないように助けたい。
痛いほど感じる、ジンからの視線。
私に詰め寄るのか子どもの様子を見るのか・・・
ジンがこちらへ向かってくるのを阻止するため、
表情で悟られないよう視線を合わせ、私も彼の方へ向かう。
「ガキはお前の知り合いか?」
「んっ・・・!!」
腰をグッと引き寄せられ耳元で囁かれた。
ウォッカもいて無線で他の人にも聞こえるのに、変な声が出てしまい慌てて口を抑える。
「声だけで感じてるのかよ?淫乱な奴め・・・。
理由、言ってみろ。ん?」
「や・・・めて・・・っ」
周りなど一切構わず、耳を攻められ・・・
この大変な状況の中で、昨日の情事を思い出してしまう。
「ジン・・・・・・ッ」
『待って!ヤジ馬が3人増えたわ!』
「「!!」」
無線から聞こえるキールの声で、ジンとの間に距離ができた。
ビルの下を確認すると人が増えていて、パトカーのサイレンも聞こえる。
『やけに警察の到着が早そうだし、ヤジ馬の口封じは諦めて撤収しましょ』
「しかし兄貴、奴からまだIDを抜き取ってやせんぜ」
そうだ。
あの男は自ら飛び降りたからIDを所持したまま。
「構わねぇよ。奴らもこの国の許可なしに勝手に組織(我々)を嗅ぎ回ってんだ。組織の存在を公にして騒ぎ立て、腹の内を探られたくはねぇだろ」
「世間的には騒ぎになるでしょうね・・・」
「確かに・・・」
「ズラかるぞ!」
ジンの合図に全員「了解!」と返事をして、その場を離れる。
チラッとコナンくんに視線を向けると、男の写真付きのIDと暗号の書かれたスマホを見ていた。