第5章 恋の蕾
ドスンッ──
鈍い音と共に、男の後頭部が地面に打ち付けられた。
廃ビルの屋上から覗くと、先程までここにいた金髪の外国人の男が頭から血を流して倒れている。
「チッ。仲間のようにはなりたくなかったんだろうが、まさか飛び降りちまうとは・・・」
「フン。FBIのハエどもが・・・。空でも飛べると思ったか」
落下した男の仲間はジンとウォッカによって額から銃で撃ち殺されていて。
私たちの側で壁に凭れ座る形で死んでいる。
こんな残酷なこと・・・
警察として黙って見ていてはいけないのに。
何度もこのような場面に身を置くと感覚が麻痺してしまう。
狙われている人を助けようと思う気持ちがなくなり、他人の血や死体を見ても、ある程度平気になってしまった。
「おい、ミモザ。あまり死体に近付くな」
「・・・・・・はい」
ジンに特別扱いをされているような・・・
守られていると自惚れてしまう。
昨日は彼に肌を晒し、全身に快感を与えられて。
冷静になってから考えると顔から火が出そうなほど羞恥心に襲われた。
あの後、彼自身は大丈夫だったのだろうか・・・。
かなり気になるが聞くことはできない。
私はこんなにも意識しているのに、彼は余裕の表情で目の前のことに集中している。
自分だけ淫らなことを考えてしまって・・・
しかも、殺人現場で。
欲求不満の淫乱女になったみたいだ。
『フードを被ったガキが死体に近付いたよ』
無線から、別のビルの屋上にいる組織の仲間、キャンティの声がした。
それを聞いて下を見ると、パーカーのフードを被り茶色のランドセルを背負っている子どもが・・・
先程飛び降りた男の側に立っている。
あれは確か・・・・・・コナンくん・・・?
安室さんが働く"ポアロ"を訪れた際、何度か顔を合わせたことがある。
小学生なのに随分と大人びている印象だった。
あんな所に1人でいたら危ない・・・!