第5章 恋の蕾
20:30 米花町のとある路地裏────
「ジ、ジン・・・!?」
「お前らのヤサ(隠れ家)・・・喋る気はあるか?」
「ハッ・・・うぐッ・・・」
「そうか・・・ねぇのか・・・だったら用はねぇな」
「ッ!!」
───3日前。
組織の1人がアーロンというFBI捜査官に尾行された。
すぐに始末しFBIの身分証・・・IDを抜き取り死体を捨てたらしい。
彼らは普段、待ち合わせに暗号を使用している。
組織が暗号メールをハッキング、解読して・・・
一昨日、昨日と立て続けに待ち伏せ、その場所に現れた捜査官を2人ずつ始末した。
・・・と、ウォッカが教えてくれた。
ジンは私を部屋から出した後にウォッカと2人で行ったんだ。
てっきり女性と会うのだとばかり・・・。
私を任務に連れて行く日と行かない日があるが、理由はよくわからない。
昨日は行かなくて正解だったが。
「へぇ。ジンが提案したコードネームか。相当気に入られてるじゃない」
「遊ばれているだけな気もしますけどね・・・」
ニヤリと口角を上げて揶揄うキャンティ。
左目のアゲハ蝶のタトゥーが輝いている。
第三者からそう見えるということは自信を持つべきか。
これはただ、"気に入られたい"からではなく、それが私の"仕事"だからだ。
「たまには、アタイのバイパーに乗せてやるよ!
ジンのポルシェより最高の乗り心地さ!」
「乗せてもらえるんですか?ありがとうございま・・・
「ミモザ。モタモタするな、行くぞ。俺の許可なく勝手にコイツを持っていくなよ、キャンティ」
時間ちょうどに来たジンが、当たり前のようにキャンティから私を剥がして。
当たり前のように自分の愛車に乗せる。
ここまでされたら誰もが"気に入られている"と思うだろう。
「取られたくないほどお気に入りなら、自分の身体に繋いでおいたらどうだい?ジン」
「・・・・・・考えておく」
それは考えなくていいですから。
拒否してください。