第18章 裏切り者
────自分でも、自分の感情を上手く説明できない。
これまでの人生で感じたことのない感情。
俺らしさを見失い、違和感でソワソワして落ち着かなかった。
熱はないのに顔が火照り、鼓動が速い。
もう何年も風邪を引いていないのに似たような症状だ。
俺は頭がイカれちまったのだろうか。
何故だ・・・・・・
ミモザが可愛い。
ミモザに触れたい。
ミモザが・・・・・・欲しい。
こんな、童貞みたいなことを考えてしまう。
欲求不満ではあるが、ただヤりたいわけじゃねェ。
別にヤらなくても・・・・・・いや、ヤりたいが。
ミモザのことはカラダ目的ではなく、純粋に触れたいと思った。
温もりを感じたかった。
ジンの女だと最初からわかっていたし、あの野郎のお気に入りなんて死ぬほど興味がなかった。
俺のサポートなどふざけてやがる。
ジンに守られてきた弱くて何もできねぇお姫様だろ?
ストレス解消に気が済むまで犯して殺して、目も当てられない姿で返してやろうか・・・と、今考えれば我ながら残酷すぎる計画を立てていたくらいだ。
やばい。
とにかくやばい。
感情が追いつかねぇ。
ジンの野郎と女の好みが同じだというのは、虫唾が走るどころの話ではない・・・が。
それを一旦置いといてでも、ミモザを俺のものにしたくて堪らなかった。
どうするんだよ。胸が苦しい。
死ぬのか?俺は。
座席の隙間から後ろにいるミモザを盗み見る。
怒鳴ってしまったし、言葉に詰まっていたから泣いているのではと気になった。
俯いていて表情はよく見えないが、柔らかそうな髪が見えただけでもドキッと心臓が跳ねる。
重症だな、これは。
どう声を掛けるのが正解か・・・・・・。
マジで頭が弱くなって気の利いた言葉が1つも出てきやしない。
・・・・・・出てこないのではなく知らないだけか。
女に優しくした経験はないのだから。
もういい。考えるだけ無駄だ。
とりあえず落ち着け・・・・・・俺。
なるべく無心でいる為、窓についた水滴を眺めていることしかできなかった。