第18章 裏切り者
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日本とドイツの往復。
再び小型飛行機でピンガと八丈島へ戻る。
フランクフルトでは、ジンの顔どころか声も聞けず。
一目でも会えるかもしれないと勝手に期待してしまったのがいけなかった。
あの女性は上手く逃げ切れただろうか。
肩の傷を手当てしてもらえていたら・・・いいのだけど・・・。
擦り傷の私でさえ痛みが結構酷いのだから、彼女はもっと深く傷付いていると思う。
ふと外に目を向けると窓に水滴が付いていて。
雨がシトシトと降り出したようだった。
「はあァ!?ふざけんなよ・・・・・・ッ、クソ!!」
前の席にいるピンガがスマホを投げ、バンッと大きな音を立てた。
相当苛立っている。
ただでさえ、無言のギスギスした空気の中で八丈島まで耐えなければいけないというのに。
恐る恐る何が起こったのかと問うと、不機嫌な彼は舌打ちと溜息を交えて怠そうに話し始めた。
「・・・あの女・・・さっきの。ジンの野郎が殺ったんだとよ。マジで胸糞悪ィ・・・」
「え?さっきのって・・・・・・」
「さっきセンターで見られた女だ。お前が止めなければ俺が始末できたのによォ!!」
頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けた。
全身が冷えて指の先まで冷たくなった。
あぁ・・・なんてことをしてしまったんだ。
私が彼女を追いかけていれば・・・。
全力で守っていれば・・・。
ジンに始末される可能性を、なぜ考えられなかったのだろう。
あの人に見つかったら助かるわけないじゃない。
私のせいで・・・何の罪もない人を・・・────
「ごめん、なさい・・・・・・っ」
「・・・・・・・・・チッ」
心の中で謝り続けた。何度も・・・何度も。
やっぱり私は、組織に相応しくない。
組織にいるべきではない。
人の死には慣れないし、慣れたいとも思わない。
「・・・次は足引っ張んなよ」
「・・・え・・・・・・?」
突然の穏やかな口調に別人かと思ってしまった。
意外だった。
ピンガの中で、次の任務も私を連れて行くことになっているのだと。
私が謝ったのは足を引っ張ったからではなく、あの女性に向けて。
だけど、そのことはもちろんピンガは知らない。
さっきは怒鳴っていたのに・・・。