第18章 裏切り者
──警察が来る。見つからないように隠れとけ。
仕事の休憩中、スマホを開くと同時にピンガからのメッセージ。
八丈島に戻って早々、日本の警察が視察に来ると連絡がきた。
ここはインターポールなのに、なぜ日本の警察が?と不思議に思いながら昼食のパンをパクリと頬張る。
ここのカフェはコーヒーだけでなく、他の飲み物やデザート、軽食までも全てが美味しくて。
つい食べすぎてしまうのだが今日は味わっている暇はないようだ。
警察・・・か。
フランクフルトのネットワークセンターに侵入した件に関係があるのかもしれない。
変装をしているので大丈夫だとは思うが、顔見知りの警察が来ている可能性もある。
油断しないようにしなければ。
ピンガのサポートと言えども、あれから特に指示はない。
彼の仕事については、「老若認証」というシステムを使っていると聞いた。
骨格から老化や若返りを計算し、その顔をCGで作る。
それと合致する顔を「顔認証」で探す。
長期の逃亡者や誘拐の被害者を世界中で追うことができるシステム・・・らしい。
・・・というのも、ピンガはそれ以上は深く教えてくれなかった。
潜入しているのに知らなくていいのか?と口から出かかったが、私もそれ以上は聞かなかった。
ピンガが良いならそれで良い。
首を突っ込んで、また新たな被害者を出したくなかった。
どんどん弱くなっていく自分が情けなかった。
パンを1つ食べ終わった時、新着のメッセージが届いた。
────今からそっちへ行く。
ピンガからだ。
そっち・・・とは、カフェに来るということ?
いつも何も言わずに来店するのに今日はどうしたのだろう。
もしかして、警察も一緒に行くから出てくるなという意味・・・?
意図は不明だが、今はタイミング良く休憩中だ。
警察がここを去るまで静かに身を潜めていることにした。