第18章 裏切り者
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「もたもたしてんじゃねぇ、キール」
「え、えぇ・・・」
川に逃げ込んだ女のこめかみを狙い、撃ち殺した。
証拠を残さぬよう、その女が落としたスマホも一緒に。
その身体は、暗い川底へと沈んでいった。
ユーロポール・防犯カメラ・ネットワークセンターに侵入したピンガがヘマをしたらしい。
ただ情報を盗むだけで目撃されるとは、鈍臭い。
しかも、見す見すと逃がしやがって・・・つくづく使えねぇ野郎だ。
バイクで追っていたキールも、女を追い詰めたというのに拳銃を構えるだけで全く撃ちやしない。
若い奴はやる気がねぇのか、こちらに皺寄せがくるからたまったもんじゃねぇ。
「ジン・・・。ピンガとミモザは、もう日本に引き返すのよね?一旦合流するの?」
ヘルメットを取り、肩を抑えているキール。
あの女を撃つ際に流れ弾がキールの右肩を貫通した。
まあ、少々手が滑った・・・・・・、という所だ。
もピンガと共にこの近くにいる。
アイツらは怪しまれる前に、再びパシフィック・ブイに戻らなければならない。
顔を合わせるチャンスは・・・今だけ・・・。
・・・・・・────
怪我はしていないか。
ピンガに何もされていないか。
一刻も早く、あの野郎から取り戻したい。
は・・・それを望むだろうか・・・。
「・・・合流・・・、しない方が良さそうね。必要事項はまたピンガに連絡するわ」
「・・・・・・・・・あぁ」
生温い風が吹き、川が切なそうに揺れていた。