第17章 "彼女"の正体
────強がっていても飛び出しそうな心臓の音は鳴り止まず、目覚めてからずっと呼吸が苦しい。
「そっちでの任務はテメェの好きにしろ、ってさ。どうする?お姫様」
「っ・・・その呼び方、やめてください。────私は・・・・・・何をすれば・・・いいんですか・・・」
「へェ。素直に受け入れンのか」
腹を括りピンガに返事をした。
何をすればいいか───
そんなこと、聞かなくても本当はわかってる。
私は、サポートという名の・・・・・・彼の性欲処理の為に呼ばれたんだ。
現に後ろ手で拘束されているのは、そういうこと。
おそらく、この海中では思うように発散できないのだろう。
女性に変装している彼が一般人に手を出すことは難しい。
痛いほど感じる視線。
未だ私を見下ろすピンガを睨み上げた。
「ククッ。マジで良い顔してンなァ?度胸のある女は好きだぜ?」
鼻が触れ合うスレスレの所まで近付かれ、彼の息が掛かる。
次にされるであろう行動に思わず目を瞑った。
「っ・・・・・・」
「・・・・・・」
目を閉じ息を止め、微動だにせずピンガが動くのを待つ。
「期待してるとこ悪いが、俺は人の女に興味ねェから。しかも?ジンの野郎のお下がり・・・・・・笑っちまうな。頼まれてもごめんだ」
「・・・・・・」
「まァ、どうしてもっつーなら考えてやらなくも・・・・・・いや、もう少し出るとこ出てりゃ・・・」
「期待してません。頼みません。離れてください」
ピンガのふざけた言葉に、緊迫していた空気が変わった。
まるで私が誘っているような言い方。
出てるとこ出てりゃ?
スタイルに自信があるわけではないが、こんな風に貶されたのは初めてかもしれない。
──ジンは・・・どんな私も愛してくれていた・・・
ジンのことが頭から離れない自分・・・そして、ピンガに怯えている自分が急に馬鹿馬鹿しくなった。