第16章 気になる視線
「・・・・・・」
「・・・兄貴、ミモザに繋がりませんかい?俺の方でも掛けてみましょうか・・・」
「勝手なことをするな」
俺からの通話には応じず、ウォッカの方に出たとしたら・・・・・・アイツにまた酷い言葉を浴びせてしまいそうだ。
────・・・一言でも良い、声が聞きたい。
本音が口から飛び出そうになるのをグッと堪え、通話を一旦諦める。
今は出られない状況なだけだ。
知人がいない海の中へ、たった1人潜入しピンガも見つからず焦って心細い思いをしていることだろう。
きっと、通知に気が付いたら掛け直してくる・・・
「友人の部屋に呼ばれたって。もうあっちの生活に馴染んでるみたいね」
「・・・ハッ。馴染む余裕があるのか?だいたい、遊びに行ってるわけじゃねぇんだ。どんな理由で呼びやがった」
「さあ・・・。子猫ちゃん同士で語りたいことがあるのよ・・・・・・あ、友人って女とは限らないわね」
ベルモットの言葉にピキッと青筋が立つのを感じた。
この女はいちいち俺を煽りやがって・・・・・・悪趣味な奴め。
友人と呼べるほど仲が深まったとはいえ、が男の部屋にのこのこ上がり込むか?
いくら何でも危機感は持ってるだろ。
しかし・・・"ピンガの情報"を餌に呼ばれたのだとしたら・・・────
任務を遂行したい今のアイツは情報が手に入るなら、と。
「チッ・・・・・・」
「気にしすぎよ、ジン。あなたこそ余裕を持ったら?とりあえず、ピンガには私から連絡するわ」
「何かあれば俺が様子を見に行きやすぜ」
──自分でも、よくわかっている。
他のことに手が付かないほど、小娘にここまで執着するのは如何なものかと。
と知り合う前の自分を思い出せない。
男だろうが女だろうが、アイツを部屋に呼んで良いのは俺だけだ。
俺に助けを求めろよ・・・・・・・・・────