第16章 気になる視線
♦︎♥︎♦︎
「ピンガが見つからないって・・・・・・もう耳に入ってるかしら?」
「・・・何のことだ、ベルモット」
「ミモザからのメッセージよ。ピンガらしき男がいないからどんな変装をしてるのかって。ピンガに聞いてない?」
「聞いてるわけねぇだろ。事前に本人に確認しておけよ」
「大丈夫かしらね・・・・・・。代わりに他の男から言い寄られてるって書いてあるわ」
意味がわからねぇ。
ピンガが見つからない?
他の男から言い寄られてる?
アイツは何の為にパシフィック・ブイに単独で乗り込んでるんだ。
苛つきが収まらず、今日何本目かわからない煙草に火を点ける。
元々ベビースモーカーだが、がいなくなってからというものわかりやすく回数が増えた。
任務を反対し突き放したことを後悔している間に、アイツは俺に何も言わずアジトを出て行った。
頭を殴られたような感覚に陥り、しばらく何も考えられなくて。
本気で嫌われてしまったのか・・・・・・と、認めたくはないがアイツにしでかした仕打ちの数々が思い起こされる。
もしかしたら、今でも記憶喪失の時の言動を恨んでいるのかもしれない。
考えれば考える程、動悸が激しくなっていった。
「まったく・・・・・・。そんな顔するくらいなら女心を勉強した方が良いわね。あっちでイイ男見付けても文句言えないわよ」
「・・・フン。ガキを相手にする野郎など・・・・・・」
海の奥深くへ沈めてやる。
「ふふっ、そのガキに惚れてるのはどこの野郎かしら?それに・・・・・・今は大人でイイ女に変装してるのよ。見れなくて残念ね」
「おい・・・・・・余計なことをしてくれたな・・・・・・」
ベルモットの信じられない発言に奥歯をギリッと強く噛んだ。
俺が見ていないの姿を、他の野郎が見ているという事実。
言い寄られてるって・・・そういうことかよ。
さっさと連れ戻さねぇと生きた心地がしない。
嫌われていても良い。
やはり、側に置いておかないと俺が駄目になる。
吸い始めたばかりの煙草を捨てながらスマホを取り出し、通話ボタンを押した。