第15章 外の世界へ
小走りでジンを追ったが見つからず、彼の部屋の前で足を止めた。
説得・・・できるだろうか。
怒鳴られる覚悟は出来てる。
ドクン、ドクン・・・と脈が波打ち、震える手を抑えながら扉を叩いた。
「ジン・・・・・・私・・・、っきゃ!?」
開いた扉から伸びてきた手にガッと腕を鷲掴みされ、壁に押し付けられた。
「てめぇ・・・正気か?」
「ジ、ン・・・・・・」
「・・・撤回しろ。今なら聞かなかったことにしてやる」
「・・・・・・すみません・・・・・・行かせてください・・・」
ジンの優しさに甘えていた。
多少の我儘なら許してもらえるだろう。
怒っていても最終的には認めてくれるだろう・・・・・・と。
「駄目だ。撤回しろ」
「っ・・・、私も・・・役に立ちたいんです!」
「・・・・・・ハッ、若い男が良くなったか?バーボンと俺の次はピンガかよ」
馬鹿にするように笑われ、胸が苦しくなった。
私にはジンだけなのに・・・彼もわかっているはずなのに。
はっきりと否定するべきだが、男好きと言われたことで言葉を失ってしまった。
睨むように絡み合う視線────
可愛く話したいのに素直になれない。
このままでは本当にピンガが目的だと思われてしまう。
顎を上げられたと同時にジンの顔が近付く。
唇が触れそうなほどスレスレの距離で。
こんな状況でも・・・キスしてほしくて。
「撤回しろ」ではなく、「行くな」と強く抱きしめてほしい、なんて・・・・・・。
自分から離れる決断をしておいて自己中な女だ。
「・・・・・・もう一度だけ言う・・・・・・撤回しろ。お前に長期の潜入が務まるわけがねぇ。その少ない脳みそでよく考えろ」
そんな言い方されたら、素直に撤回などできない。
「何を言われても行きます。馬鹿にしないでください」
「・・・・・・・・・チッ、勝手にしろ」
密着していた身体を突き放され、部屋に1人残された。
急激に力が抜けてズルズルと壁を伝い座り込む。
しばらく会えなくなるというのに・・・・・・喧嘩別れをしてしまった。
一気に押し寄せる後悔。
ジンの瞳が揺れているように見えた。