第15章 外の世界へ
「パシフィック・ブイは、インターポールが最大級の技術で開発した監視用施設のことよ。八丈島の近海に建設されていて海中に存在するの」
「えっ・・・海の中・・・ですか?」
「ええ。そこに3年前から潜入しているのがピンガという男。金髪のコーンロウだから見ればすぐにわかるわ」
ベルモットに潜入先とピンガの特徴を教えてもらったが、"コーンロウ"という言葉に頭を傾ける。
恐らくヘアスタイルの名前なのだろうが、私の中では初耳だった。
「無知ですみません・・・、コーンロウって何ですか・・・?」
「頭全体の髪を細かく編み込みにしたヘアスタイルのことよ」
お洒落なヘアスタイルをイメージすると、自分よりも若そうな男性の姿が浮かんだ。
気性が荒い一面もあるとラムが言っていたが、3年も潜入しているなら相当実力のある人物なのでは・・・。
「ピンガって若いんですか?」
「そうねぇ・・・23くらいだったかしら?ジン?」
「・・・・・・」
「ラムのお気に入りらしいわよ」
年下で、ラムのお気に入り・・・。
今まで周りがほとんど年上だったため、年下との接点がない。
それでも組織の中では先輩だ。
築き上げた3年間に傷を付けないよう、失礼のないようにサポートしなければ。
海中ということは助けを呼んでもすぐに来てもらえない。
ピンガの機嫌を損ねたら海に沈められる可能性もあるのではないだろうか。
考えるだけでゾクっと身震いし、背筋が伸びる思いだ。
「ミモザ、来い」
「え、あ・・・まだ聞きたいことが・・・」
「黙れ、来い」
短く言い捨てたジンは私を待たず部屋から出て行った。
いつもの優しい甘い雰囲気はなくて。
彼の反対を強引に押し切り行くことを決めてしまったから自業自得なのだが・・・。
「ミモザも大変ね。あの手の掛かる男を相手にするのは・・・」
「・・・いえ、私が我儘なだけなので・・・」
「良い機会ね。ジンから離れられるんだもの」
離れたいわけでは・・・と言い掛けたが、本心では距離を置きたいと思っているのだろうか。
決して、ジンと一緒にいるのが嫌なのではない・・・
1人で何かを成し遂げたいんだ・・・────