第15章 外の世界へ
「早かったわね、ジン。話は付いたの?」
「・・・ベルモット、てめぇもパシフィック・ブイへ行け」
「あら。指示されたのはミモザだけなはずよ。新しい顔がいると注目されるから・・・私だと目立つんじゃないかしら?」
黙って言うことを聞けば良いものを、もベルモットも頑なに拒否をする。
変装でも何でもやり方はあるだろう。
俺がを何よりも大事にしていることを知っていて、引き離そうとしているサマに憤りを覚える。
ふわっと香る花のような甘い香り──
アイツが側にいなくても、俺自身に染み付いているように香りが残っていて。
抱きしめてやれば良かった。
口付けたかった。
「行くな」と引き止めれば良かった。
撤回するべきなのは俺の方だ。
「勝手にしろ」などと突き放すつもりは微塵もなかったのに。
醜いプライドが邪魔をした。
今なら、まだ・・・・・・
「今ならまだ、間に合うと思うけど?1人が心配ならバーボンに行かせ・・・
「殺されてぇのか」
「はあ・・・過保護すぎるわよ。可愛い子には旅をさせてみたらどう?」
突き付けられた拳銃にも動じず、溜息を吐きながら脚を組み直すベルモット。
可愛いから旅をさせたくないんだろうが。
可愛くて、俺に従順なに甘えてしまっていた。
アイツなら、俺の元に残る選択をすると自信があった。
記憶喪失の期間も含め、の心の変化に気付いてやれなかった結果なのか。
「ミモザに何を言ったのか知らないけど・・・、ジンの気持ちが変わらないならこっちで進めさせてもらうわよ」
「・・・・・・」
「口、出さないでちょうだいね」
「・・・・・・勝手にしろ」
「あ、兄貴!」
先程と同じ言葉を吐き、アジトを後にした。
クソ・・・。ガキくさくて面倒で、自分で自分が嫌になる。
しかし、今更戻るなど格好悪いことは今の俺にはできなかった。
1人で行きたいなら行けば良い。
どうせ、すぐに根を上げて助けを求めてくるのだろう。
自分を納得させるには、そう思うしかなかった。