第3章 黒ずくめの男
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「はあ・・・」
ソファに座り直し、新しい煙草に火をつける。
1人になり静まった部屋がやけに寂しく感じ、溜め息を吐いた。
たった15分。
あんなに癒される時間を過ごしたことはない。
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「任務にてめぇの女連れてくんなよ。バーボン」
任務に向かうため外に出ると、バーボンと女がコソコソと話をしていた。
距離が近くて後ろ姿だけでも恋人同士に見える2人。
「まさか。僕は自分の恋人をこんな所に連れてくることはしませんよ」
"こんな所"だと?
顔は見えないが女が切なそうに俯いた気がした。
「僕が拾ってきた大事な新入りです。瑠愛、ジンに挨拶を」
コイツが誰かをスカウトするなんて今まであっただろうか。
単独行動が多く、他人に興味がなさそうなこの男が。
しかも何だ?
声を掛けられても女は振り向かない。
イライラが募り、その背中を睨みつけた。
「おい。使いもんになるのかよ、こんな──」
力づくでこちらを向かせようと掴んだ肩が、細くて弱々しくて一瞬戸惑った。
少し力を入れたら壊れそうで、引っ張ったら飛んでいきそうで・・・。
戸惑いながらも咄嗟に力を加減した。
ようやく視線が合ったと思えば俺を見た途端、怯えているのか女の華奢な身体が震え出す。
・・・どいつもこいつも気に入らねぇ。
「・・・おい。こいつは口が聞けねぇのか?」
「いえ・・・。瑠愛、しっかりしてください」
「ッ・・・・・・丸音・・・瑠愛、です・・・」
声が出ないのか、小さいが心地良い透き通った綺麗な声が聞こえた。
上目遣いに俺を見る大きな瞳。
くすんだブラウンの髪はポニーテールに結んであり、くるんと丸まった毛先が風になびいていて。
怯える姿は小動物そのものだ。
────側に置いておきたい。
単純にそう思った。
「ハッ。こんなひ弱そうな女に何ができる。何故拾ってきた」
「意外と使えるんですよ。見かけに寄らず・・・男を悦ばせるのが得意なもので」
その言い方だと・・・ハニートラップでもさせてんのか。
そこら辺の男は、この女に見つめられただけですぐに口を割りそうだ。
悦ばせるのが得意とは・・・・・・
やはりお前ら、関係があるんじゃねーかよ。