第3章 黒ずくめの男
「気に入った。これからは俺に付け。ハニートラップはもうやらなくていい」
「・・・・・・はい?」
突拍子もないことを言われ声が上擦ってしまった。
新しいおもちゃを見つけた子どもみたいに楽しげに笑っている。
どういうこと・・・?
「俺の任務に付いてこい。常に俺の側にいろ」
「あの・・・私、末端ですし・・・」
「だから何だよ。バーボンとは一緒にいられて俺は無理と言いたいのか?」
さっきからやたらとバーボンの名前が出てくる。
というか・・・「俺の側にいろ」って・・・ジンも彼と同じようなことを言うんだな。
男はそういう言葉に憧れがあるのだろうか。
言うなら一生その言葉を守るくらいの気持ちでいてほしいものだが・・・。
『時間です』
外から扉の音と共にバーボンから声を掛けられた。
こちらが出て行くのを待たずに時間を知らせる所が彼らしい。
「チッ・・・いけ好かねぇ野郎だ・・・」
相当嫌われてるな・・・彼は。
「じゃあな。逃げんじゃねーぞ」
「・・・わかりました」
心なしか最初より表情が柔らかくなった感じがするのは・・・気のせいだろうか。