第15章 外の世界へ
「お言葉ですが・・・」
『ピンガ1人でも充分ですが・・・少々気性が荒い一面もありますからね・・・。彼には私から伝えておきます。他の者も引き続き・・・頼みましたよ』
「「「「・・・・・・了解」」」」
ジンの言葉を遮り、話し終えたラムは通話を切った。
"できない"、"やりたくない"・・・は通用しない。
最初から決定事項なのだ。
突然の指示に冷や汗が止まらない。
先程まではしゃいでいた自分は馬鹿だったと痛感した。
「あ・・・兄貴・・・。良いんですかい?ミモザを・・・
「良いわけねぇだろ・・・・・・よりによって、コイツ1人で・・・ッ」
降谷さんに組織への潜入を命令されたことを思い出す。
あの時は好きな人に見捨てられたようで、生きている価値が見出せなくなっていた。
上司と言えど、恋人を危険な組織に送り込むだなんてどんな神経をしているのだろう・・・と。
でも、今は・・・──?
ジンに愛されて部屋に1人、守られている生活。
彼は私を捨てるような人間ではない。
命令であろうと、どうにか阻止できないか考えてくれている。
元は人々を助けたい、守りたいという強い想いで警察官になった。
何の関係もない人を巻き混む悪の組織だが、現在の私の居場所はここだ。
それならば、できることをしよう。
パシフィック・ブイがどこにあるのか、ピンガはどんな人なのかはわからない、けど・・・
私も・・・・・・誰かの役に立ちたい。
"必要ない"と否定されていた溝は自分が思っている以上に深く、平穏な日々を過ごしていても埋まっていなかった。
自由なのに自由ではない時間が、更に深い溝を作り上げてしまったのかもしれない。