第15章 外の世界へ
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「・・・あの・・・・・・何で怒ってるんですか?」
「黙ってろ」
「えー・・・・・・」
ジンとの暮らしは夢のようだった。
しかし胸の内を曝け出せず、もう少し我慢しよう・・・と思っているところにアジトに呼び出された。
目的は不明だが久々の外出に胸が躍る。
バーボンと鉢合わせする不安が頭を過ったが、それよりも部屋の移動以外で外に出られた喜びが何より大きかった。
そんな私とは反対に、ジンの機嫌はすこぶる悪くて。
先程からブツブツ文句を垂れていて、話し掛けても「うるせぇ」「黙ってろ」と聞く耳を持たない。
最近のジンは私に甘かったから不機嫌の理由を知りたかったけど、しつこくすると怒鳴られそうだったので口を結んだ。
「Hi,ミモザ!ちょっとあなた・・・痩せたんじゃないの?ちゃんと食べてる?」
「食べてますよー!ベルモット、相変わらず美人ですね!会いたかったです!!」
「な、何?突然どうしたのよ・・・」
ベルモットとウォッカ、キャンティにコルン、キールが集まっていて、バーボンの姿はなく安堵した。
久々の顔ぶれ。
私1人、テンションが変に高くなってしまった。
「ミモザ・・・・・・初めて見る気がするわ。あなたの少女のような笑顔」
「あ・・・すみません、嬉しくて・・・。少女だなんて・・・そんな・・・」
恥ずかしい・・・。
子どものようにはしゃいでしまい、キールの言葉にハッと我に返る。
確かに思い返してみれば、組織に来てからは常に緊張感があり、ジンの記憶がなくなってしまってからは笑い方を忘れていた。
家族も仕事も失った今の私にとって、組織の人たちは第2の家族のような・・・本当の仲間として自然と受け入れられたのかもしれない。
黒の組織を容認するべきではないことは重々承知だ。
人を騙すのも殺すのも、したくはない。
なのに、何故・・・。
人間はその場の環境に染まっていく生き物・・・ということだろうか。
それとも私の心が弱っているせいなのだろうか。
引き締めようとしても勝手に頬が緩んでしまう私に、心底気に入らないといった視線が上からグサグサと刺さっていた。