第14章 平穏な日々 ※
────ジンの煙草の匂いがする。
ふかふかの・・・・・・ベッド?
肌触りが良くて気持ちいい。
いくらでも眠れそうな気がする。
今、何時だろう?
まだ寝ていてもいいかな・・・・・・
でも・・・・・・何だか・・・・・・くすぐったいのと、重くて自由に身動きができないのと・・・・・・
そして・・・耳に響く音────
「んっ・・・・・・はぁ・・・ん、あ・・・・・・っ」
「お目覚めか?いつまでも寝やがって・・・」
「ぇ・・・え・・・?ん・・・、すみま・・・やぁっ・・・ん!」
身体を覆われて、ジンの舌が私の耳や首筋を這っている。
ゾクゾクするたびに何度も跳ねてしまうのが恥ずかしい。
耳朶や耳裏、中までも丁寧に舐めながら、彼の手は胸をやんわりと揉み始めた。
「・・・・・・お前・・・・・・、誰にも抱かれてねぇだろうな?」
「んぁ・・・っ、だ、か・・・?」
「ハニートラップ・・・・・・やってねぇ、よな?」
「っえ・・・・・・?」
不安そうな表情に変わり、ジンの手が止まる。
ハニートラップ・・・?
辞めろと言ってくれたのはジンでしょう?
何故疑っているのか・・・と不思議に思ったが、罰が悪そうに視線を横にずらし首筋に顔を埋めたジンに、嫉妬しているのだと悟った。
彼が記憶を失っていた1年間。
不安や惨めな気持ちで日々を過ごしていた。
必要とされていないならば、ここにいる意味はない・・・と、心が折れて立ち直れない状態だったけれど。
記憶が戻った今、不安なのはジンも同じなんだ。
実質別れていたようなものだから、他の男に抱かれていたかもしれないと頭を過ぎるのは自然なこと。
このように気にして嫉妬して、甘えるような素振りを見せてくれるジンが可愛くて。
サラサラの長髪を梳かすように頭を撫でた。
「・・・・・・おい」
「ハニートラップも・・・誰にも抱かれてません。ジンが、いい・・・・・・ジンじゃなきゃ・・・嫌です・・・」
「ッ・・・!」
いつも余裕のある彼が私だけに余裕をなくして、私だけに愛をぶつけてくれる。
私を必要としてくれるこの瞬間────
涙が出るほど幸せを感じた。