第14章 平穏な日々 ※
しばらく静かにの顔を眺めていると、思い出したようにベルモットが口を開いた。
「そういえば、久しぶりにピンガに会って話を聞いてきたけど・・・結構上手くやってるみたい」
「あ?誰だそれ」
自身のネイルを眺めながら話すベルモットに思ったことをそのまま返すと、深い溜息を吐かれた。
いや、呆れた顔されても知らねーよ。
ピンガ?そんな奴いたか?
「はぁ・・・あの子が不憫だわ」
「だから誰だ、さっさと言え」
不憫も何も俺には聞き覚えがない名前。
たとえ知っていても、すぐに忘れられる印象の薄い奴ということだ。
なかなか言い出さないベルモットにイライラが募り煙草を取り出したが、が寝ている上で吸うのは火傷の危険性があり躊躇した。
あー・・・・・・
触りてぇ。
いつ起きるんだよ?おい。襲うぞ。
指の背での柔らかい頬をそっと撫でてみる。
くすぐったいのか「ん・・・」と顔を僅かに動かしたが、起きる気配はなさそうだ。
ガキかと思えば妙に色気のある仕草で俺を煽りやがって。
こちらとしては欲求不満でたまったものじゃない。
彼女の頬を軽く摘み唇を近付けようとしたところで、鋭い視線がうざいほど突き刺さった。
「私との会話を中断して寝込みを襲うつもり?相当飢えてるわね」
「まともに触れられなかったんだ、足りるわけがねぇ。夜の任務まで邪魔するなよ」
起きるまで待つつもりだったが目障りな女がいては何もできやしない。
幸せそうに眠るを抱え、部屋を出ることにした。
「もう・・・。3年前からパシフィック・ブイに潜入してるピンガよ。本当に覚えてないの?」
「ああ・・・そういや、そんな野郎もいたか?・・・ま、せいぜい上手く生き延びろよ」
「まったく、本当に不憫だわ・・・」
先程から何に対して不憫なのか意味がわからない。
長期任務とは、ご苦労なことだ。