第12章 すれ違い ※
先に車から降りた降谷さんは助手席に回り、私に降りるよう扉を開けて促した。
何度も声を掛けられたが彼の部屋に行ったら何をされるかわからないのだ。
易々と入るわけにはいかない。
子どもの我儘のように捉えられるかもしれないが、何でも言うことを聞く優等生から完璧に卒業する。
・・・とはいえ、乗車したままでは何もできず。
走って逃げるにしても簡単に捕まるのは目に見えている。
「・・・・・・、考えても無駄だ。君は1人では何もできない。僕の側で、僕の言う通りにしていれば良いんだ」
「・・・・・・そんな風に思ってたんですか?私ならできるって・・・私にしかできないからって組織に潜入させたんじゃないんですか?」
「結局、失敗しただろ。あんな男と恋人ごっこをしようとするから・・・。奴にとって女は遊び道具だ。現に忘れられて1年も経っている」
「恋人・・・ごっこ・・・・・・」
そんな軽いものではない。
私たちは本気で愛し合っていた。
まだ始まったばかりだったけど・・・
"色あせぬ恋"を2人で作ろうとしていたんだ。
そもそも、恋人になった方が動きやすくなると言ったのは降谷さんじゃないか。
「もう終わったことだから・・・君も忘れろ」
溜息を吐きながら差し伸べられた手をパシッと振り払う。
そして睨むように見上げたが彼は動じず・・・
それどころか、私の顔を掴み唇に噛み付いてきた。
「んっ!!やめ・・・っ!!」
座席を倒され、両手首を固定されて。
固く閉じていた唇から舌が侵入してくる。
「や・・・ッだ・・・!!」
「うるさい」
あの日、私が降谷さんに別れを告げた時のように・・・
冷ややかな目で・・・
ギリギリと痛むほどの力強さで・・・