第3章 黒ずくめの男
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「何故てめぇも来た。自分の女が心配か?」
「世話係として・・・心配でしたので。何をされるおつもりですか?」
「ほぉ・・・世話係ねぇ。てめぇも女に執着することがあるんだな、バーボン」
面白いものを見つけたように、ニヤリと口角を上げてを挑発するジン。
バーボンの笑顔も彼に負けていないとは思うが、やはり逆らってはいけない雰囲気がある。
「僕が大事に育てていますので。ジンであろうと手は出さないでいただきたいのですが・・・・・・。
それとも、こういう女がお好みですか?」
「フッ・・・、それはてめぇの方だろ。まぁいい。
俺も暇じゃあねぇんだ、15分で返すさ」
「必ず・・・ですよ」
一瞬だけバーボンと視線を合わせ、意を決してジンの部屋に入った。
「相変わらず気に食わねぇ野郎だな」
舌打ちをしながらドカッとソファに座るジンを横目に周りを見渡すと、必要最低限の物しかない殺風景な部屋だった。
この空間に彼と2人きり・・・
あまり意味はなさそうだが、なるべく長めに距離を取る。
部屋の外でバーボンが待っていてくれるから、もしもの時は逃げるか助けを呼べばいい。
そんなことをしても無駄なのは・・・・・・百も承知だ。
「難しい顔してんな?やはりアイツと深い関係なんだろ?」
「いえ・・・・・・」
「フン。どいつもこいつも秘密主義かよ・・・気に入らねぇ」
眉間に皺寄せつつ脚を組み、取り出した煙草にマッチで火をつける。
それはとても強い匂いで、煙草嫌いの私には耐えられないはずなのに・・・
不思議なことに拒否反応が出なかった。
それどころか口に咥えている姿がサマになっていて見入ってしまう。
「・・・何だよ。お前も吸うか?」
「え、いえ!吸ったことないので・・・!!」
「試してみればいいじゃねぇか。まぁ・・・初めてでコレは相当キツいだろうけどな、フッ」
この空気は一体・・・?
先程とは打って変わって穏やかに笑う彼に、こんな笑い方もできるんだ・・・と驚きを隠せない。
この笑顔の裏では何を企んでいるのだろうか。