第3章 黒ずくめの男
ジンとバーボンの視線が痛くて余計に動けない。
「早くしろ」とバーボンの笑顔が言っている。
「おい。使いもんになるのかよ、こんな──」
「ッ・・・!!」
無理矢理、肩を強く引っ張られ後ろを向かされた。
恐る恐る見上げると、長い前髪からジッと睨む深緑の鋭い瞳。
怖い。目だけで殺されそうだ。
逸らしたいのに逸らせない。
私より30センチ・・・40センチほど高い長身で腰まであるストレートの銀髪。
黒いロングコートと帽子が、より恐怖を煽る。
この人が・・・・・・ジン・・・・・・。
「・・・おい。こいつは口が聞けねぇのか?」
「いえ・・・。瑠愛、しっかりしてください」
「ッ・・・・・・丸音・・・瑠愛、です・・・」
恐怖で声が出なくなるのは初めてだ。
掴まれている肩が折れるのではないかと思うくらい痛い。
「ハッ。こんなひ弱そうな女に何ができる。何故拾ってきた」
私から離れ、鼻で笑うジン。
熱を持った肩を抑えて、冷や汗が止まらない身体を必死に落ち着かせた。
「意外と使えるんですよ。見かけに寄らず・・・男を悦ばせるのが得意なもので」
「フン・・・。てめぇが仕込んだっつーのか」
「さあ?ご想像にお任せします」
2人の間にバチバチと火花が散る。
「兄貴、そろそろ・・・」
「・・・あぁ。おい、女。任務が終わったら俺の部屋に来い」
「・・・・・・え?」
「いいか?逃げたら殺すまでだ」
そう言い捨てるとウォッカが運転する黒い車、ポルシェ356Aに乗り去っていった。
ジンの部屋に・・・・・・呼ばれた?
「予想通りですね。思ったより早かったですが・・・」
「・・・・・・私は、何をされるんでしょうか・・・」
「・・・組織に適しているか試される・・・かもしれませんね」
組織に適しているか試される・・・・・・つまり・・・
「ジンと・・・寝る・・・?」
あの冷酷なジンに抱かれたら、私はどうなってしまうのだろうか。
殺されるも同然なのでは・・・。
女、子どもにも容赦ないと聞いていたけど、あの目付きを見たら納得だ。
「僕も行きますので・・・とりあえずしっかりしてください。怯えていたら怪しまれます」
「・・・・・・はい・・・」